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戦争へ疑問、オバマ支持 共和党員のイラク帰還兵

2008年11月13日

    写真大統領選投開票日の4日、地元選対事務所に詰めていたマイケル・ウィルソンさん=フロリダ州メルボルン、梅原写す ※写真をクリックすると拡大します

     すべての始まりは5ドル(約500円)の募金。それも、パソコンのキーボードをたたいただけだった。

     民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が次期米大統領に当選した4日、フロリダ州東部メルボルンに住む食品会社員マイケル・ウィルソンさん(33)は、ボランティア要員としてオバマ陣営の地元の選対事務所に詰めていた。

     共和党員だが、これまで政治には関心を払ってこなかった。そのウィルソンさんが、オバマ陣営に深くかかわるようになった。きっかけは、インターネットだった。

        ◇

     07年8月、ウィルソンさんはパソコンでオバマ陣営のサイトをながめていた。「募金した人の中から、4人をディナーにご招待」というキャンペーンが目を引いた。

     参加してみようか。募金額を最低額の「5ドル」にして、メッセージ欄に書き添えた。「私はイラク帰還兵の退役軍人で、共和党員です」

     ウィルソンさんは空軍の救護兵だった。所属する部隊が03年の開戦直前に中東に派遣された。03年夏には、イラク北部キルクークに駐留した。

     同年秋、仕掛け爆弾で負傷し、緊急搬送されてきた5人を介抱した。3人は目の前で息を引き取った。次第に、イラク戦への疑問が膨らんでいった。8年の軍務を終え04年に除隊。それゆえ戦争に当初から反対し続けてきたオバマ氏には好感情を抱いていた。

        ◇

     オバマ氏に募金した数週間後の07年8月。ウィルソンさんは、全米の募金者の代表として、オバマ氏と夕食を共にしながら語り合う4人の中に選ばれた。翌月、最初の予備選の舞台となるニューハンプシャー州に招かれた。

     政治家に会うのは初めてだったが、オバマ氏には「うそ臭いところがどこもなかった」。退役軍人向け医療助成を受けられないかも知れないと話すと「それはおかしい」と耳を傾けてくれた。イラクでの体験についても話し込んだ。好印象が深まった。

    ■初の政治参加に意義

     今年8月27日。コロラド州デンバーで開かれた民主党全国大会の壇上に、ウィルソンさんの姿があった。

     テネシー州の小さな町で育った身の上から、淡々と語り始めた。イラクでの体験を挙げ、「私は戦争を、スローガンや理屈としてでなく目の当たりで体験した。米国に必要なのは、まず戦争ありきでなく、最終手段としてだけ戦争に臨む大統領だ」と訴えた。

     そして締めくくった。「イラク帰還兵として、共和党員として、偉大な民主主義国家の市民として、私は栄誉をもって、バラク・オバマを次期合衆国大統領に指名します」

     正式にオバマ氏を大統領候補に決める際、推挙する象徴的な役が共和党員のウィルソンさんに振られたのだった。

        ◇

     ウィルソンさんはこの秋、オバマ陣営の地元ボランティアとして、草の根で選挙運動に携わった。週末の時間を割いて戸別訪問し、電話をかけた。オバマ氏を支持する元将軍らと州内を回り、軍関係票の掘り起こしに力を注いだ。

     努力は4日夜、実を結んだ。長年、共和党の地盤とされてきたフロリダ州でも勝った。「こんなに献身的な人々の運動にかかわれたのは光栄だった」

     あえて党籍は「共和党」のままにしている。歴史的な大統領誕生の瞬間に立ち会った今、「自分だけでなく、多くの人が初めて政治に積極的に参加した。オバマ、マケインの差よりも、そのことの方が大切だ」と感じている。

     (文・写真 梅原季哉=米フロリダ州メルボルン)

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