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ポスト・ブッシュの選択 ’08米大統領選挙

米大統領選のしくみ

 米大統領の権限は絶大で、行政府の長であり、軍の最高司令官も兼ねている。その大統領を選ぶ選挙は、夏季五輪が行われるのと同じ年、つまり4年ごとに行われる。08年は北京五輪の年と重なっている。

表

米大統領選のプロセス

 選挙の仕組みは複雑だ。大まかにいうと;

(1)全米各州での党員集会と予備選挙
(2)2大政党である民主、共和両党の全国大会
(3)「大統領選挙人」を選ぶための一般投票
(4)選ばれた「大統領選挙人」による選挙人投票

という手続きを経る。(1)と(2)の段階は、民主、共和両党がそれぞれ、だれを指名するのかを決める党内手続きの期間。公式の「選挙」ではない。日本の選挙のように「告示」や「公示」はないため、選挙運動をいつ始めるかは候補者次第になっている。

【党員集会と予備選挙】

 民主、共和両党の候補者指名は、一般党員の代理人となる「代議員」が党全国大会で投票して決める。その代議員を選ぶのが予備選や党員集会だ。

 この党員集会と予備選挙が、長期間にわたる大統領選挙の始まりとなる。ここで、各州の指名争いが行われ、州ごとに「勝者」が決まっていく。

 党員集会になるのか、予備選挙になるのかは州によって異なる。

 予備選挙は、投票所に足を運んで投票し、通常の選挙に近い。政党登録した有権者だけが投票できる「closed」とよばれる方式と、登録していない無党派層も投票できる「open」とよばれる方式があり、これは州によって異なる。

 一方、党員集会は複雑で、投票で決める所もあるが、注目を集めたアイオワ州の民主党の場合、地区ごとに住民が学校などに集まって議論をしながらそれぞれどの立候補予定者を支持するか確定していく。最終的な支持者数に応じてその地区に割り当てられた代議員数を配分する。それを州全体でまとめて順位が決まる。

 08年はまず1月3日に中西部アイオワ州で党員集会、1月8日に北東部ニューハンプシャー州で予備選が行われたが、この2州が全米で最初に行われるのはいわば伝統となっている。

 多くの州が同時に実施する日を、伝統的に「スーパーチューズデー」と呼ぶ。名称の通り火曜日に設定される。今回は2月5日に共和党が21州、民主党は22州と米領サモアで実施し、史上最大規模となった。

 8月末の民主党全国大会に出席する代議員の総数は4049人で、指名に必要な過半数は2025人。5日の投票を受けて1681人が「比例配分方式」で各立候補予定者に割り振られる。総数の中には予備選や党員集会で選ばれる代議員とは別に、党役員や上下両院議員で構成する「特別代議員」796人も含まれる。一般の代議員が特定候補者に投票することを義務づけられているのに対し、特別代議員は自分の判断で支持を決められる。

 共和党の代議員総数は2380人。得票数に応じて各陣営に比例配分する民主党とは異なり、多くの州が「勝者総取り方式」をとっているため、指名争いは民主党より早く決着する傾向がある。5日のスーパーチューズデーでは1023人が選ばれた。過半数は1191人。

【党大会】

 候補者指名が行われるのは、正式には夏の党全国大会になる。しかし、実際にはトップの陣営が各州で行われた党員集会・予備選挙で勝利を重ね、他の陣営があきらめれば決まりとなる。それがいつになるかは競争の状況次第で、一概には言えない。ただ今回は、2月5日に20を超える州が一斉に党員集会や予備選を予定している「スーパーチューズデー」が一つの節目になる。

【一般投票】

 一般の有権者が投票するのは11月4日。これで次の大統領が事実上決まるが、厳密にはその時に選ばれるのは「大統領選挙人」と呼ばれる有権者の代表で、その人たちが改めて投票する仕組みになっている。各州には人口などに応じて一定の数の選挙人が割り振られていて、大半の州では、一般投票で1位になった候補がその州の選挙人を「総取(そうど)り」する。選挙人は計538人。過半数の270以上を得た候補が正式に大統領に当選することになる。

 基本的には建国の当時にできた制度が現在まで引き継がれている。当時は全米で一斉に選挙をすることは無理だったし、一般の有権者は政界の事情に疎いので誰が大統領に適任かという大局的判断は選挙人に任せた方がよいという考えがあった。この制度は、得票数で多数を占めても選挙人の得票数で負ければ当選できないという矛盾を抱えている。00年の選挙で現在のブッシュ大統領に負けたゴア前副大統領がその例だ。

 大統領が就任するのは09年1月20日。主な立候補予定者が出馬を表明したのは07年の初めなので、延々2年におよぶ長丁場だ。

【選挙資金】

 選挙期間が長く、国土が広いので、大統領選挙には莫大な資金が必要とされる。

 とくに08年の大統領選は、現職の正副大統領が立候補しない80年ぶりの選挙になる見通しで、混戦模様のスタートだから競争が激しい。07年末までに1億ドル(約120億円)の大台に乗せないと戦えないと言われてきた。大統領選全体では1人あたり5億ドル規模が必要との見方もある。米国史上、最も金のかかる大統領選になりそうだ。

 資金を一番集めたのはヒラリー・クリントン上院議員(民主)。07年1月から3月までに約2600万ドル(約31億円)、06年秋の中間選挙で集めた約1000万ドル(約12億円)をあわせると計約3600万ドル(約43億円)になる。

 資金集めの方法だが、個人による献金は、党の候補指名レース向けと本選挙向けに、それぞれ1人の候補予定者につき2300ドル(約28万円)の上限が法律で決まっている。どんなに金持ちでもそれを超えることは出来ない。友人や知人に声をかけて献金をまとめる「集金者」が全米各地にいて、パーティーを開くなどして献金を積み上げていく。

 また、インターネットの献金も増えている。ロムニー前マサチューセッツ州知事(共和)やオバマ上院議員(民主)も草の根のネット献金が多い。各候補予定者のサイトには「献金ボタン」がついていて、10ドル(約1200円)から選択肢がある。

 資金の使い道は、有権者に食い込むためのテレビCMが多い。すでに全米でCMが流れている。選挙は長丁場だ。スタッフの人件費や広報などのコンサルタント料、長距離の移動に使うチャーター機などの交通費にも金がかかる。

 最終目標は大統領選の勝利だが、まず2大政党の候補に選ばれないと話が始まらない。候補になるにも、資金、人気、実力の三拍子がそろわないと勝ち残りが難しい。

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