写真・図版 6月22日、小型化された核弾頭とされるが、ミラーボールのようにも見える銀色の球体を、笑顔で視察する北朝鮮の最高指導者、金正恩氏の写真が3月に国営朝鮮中央通信(KCNA)によって公開された。撮影場所は不明(2016年 ロイター/KCNA)

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 [ソウル 22日 ロイター] - 小型化された核弾頭とされるが、ミラーボールのようにも見える銀色の球体を、笑顔で視察する北朝鮮の最高指導者、金正恩氏の写真が3月に公開された。それは勘違いした、無謀な人物という同氏の国際的なイメージに磨きをかけた。

 米映画界などから物まねされる正恩氏だが、22日には、高度1000キロに達し、日本の本州手前で海に落下した弾道ミサイルの「発射成功」で、他国の懐疑派が間違っていることを証明してみせた。

 22日の1発目を含め、北朝鮮は5回連続で発射テストに失敗してきた。しかし、直近の発射で同国のミサイル開発計画は前進をみせ、正恩氏の断固たる意思とこれにかかわった科学者に対する辛抱強さを如実に浮き彫りにするものとなった。

 4月に始まった一連の中距離弾道ミサイル「ムスダン」の試射は、大国が数十年前にミサイル開発の初期段階で使っていた手法と似ている。当時は実際テストに代わる、高度なシミュレーション装置がなかった。

 米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクドウェル博士は「北朝鮮の試射ペースは、冷戦時代の米国のそれとそれほど違わない」と指摘。「もちろん、米国が現在行っていることとは全く違う」と付け加えた。

 「これは北朝鮮がコンピューター分析能力で劣っている事実を示しているのかもしれない。そのため、同国にとっては、コンピューターでシミュレーション分析するより、新たなミサイル実験の方が簡単なのだ」

 閉鎖的な北朝鮮の国営プロパガンダメディアは、正恩氏が要求が高いが、寛容で、科学者の失敗を快く許せる理解力のある指導者として伝えている。

 これは、無慈悲で直情的だとの、海外における同氏の評判とは対照的だ。正恩氏はこれまで自らの叔父を処刑し、軍トップを5度も更迭し、さらに2回に及ぶ核実験を強行して世界に歯向かってきた。

 「人間は食べ物を食べることで成長し、科学者は失敗の中から花を開かせる」。北朝鮮国営の労働新聞は、2012年4月のミサイル発射に失敗し、自らの前にひざまずいた科学者たちに対し、正恩氏がこう語りかけたと報じている。

 記事は同年12月の発射成功後に書かれている。

 こうしたコメントは、発射失敗に動揺する科学者たちを辛抱強く励ます金氏を報じた国の出版物と同調するものだ。

 「失敗報告を受け取るとすぐに、金正恩氏は失敗はよくあることだと述べた」。若きリーダーの年間活動をまとめた2012年の本には、その年の長距離ミサイルの発射失敗についてそう記述している。

 「重要なことは、できるだけ早く失敗の原因を突き止め、発射を成功させることだ」と正恩氏が発言したと書かれている。

 <失敗で「銃撃」されない人々>

 北朝鮮の政治指導体制についての専門家で、米ジョンズ・ホプキンズ大の同国分析サイト「38ノース」に寄稿するマイケル・マデン氏は、失敗を犯した技術者を銃撃したり、粛清したりするとのうわさは「ナンセンスだ」と語る。

 「1つ注目すべきは、失敗をしたからといって人々は撃たれていないということだ」。北朝鮮指導者の動向を注視する専門サイト「ノースコリア・リーダーシップ・ウォッチ」の編集者でもあるマデン氏はこう述べた。「報告書で嘘をついたり、責任を認めなかったりした場合に、彼らは撃たれている」

 22日に行われた2発目の発射は、ここ一連の「ムスダン」発射失敗を終わらせるものとなった。ムスダンは、射程3000キロ以上で理論的には日本全土と米領グアムに到達するとされている。

 発射失敗は正恩氏を当惑させる可能性があるものの、北朝鮮の厳しく管理された国営メディアでは報じられていない。つまり、北朝鮮の国民はこの計画について全く分からないでいるのだ。

 「金正恩氏の地位や評判を損なう、大きな政治的リスクは全くない。なぜならほんの一部の人々でしか試射について知らないからだ」とマデン氏は語る。

 1日に2発目の発射を行った事実とそれ以前の失敗は、技術開発に向けた正恩氏の決意を示しているのかもしれない、とコリア・ディフェンス・アンド・セキュリティーフォーラムの上席研究員Yang Uk氏は話す。

 「与えられた時間枠の中でそれを可能とするために、必死になって作業をしてきたに違いない」と韓国軍の政策顧問も兼務する同氏は話す。

 北朝鮮の他の不可解な指導体制と同様、同国の核とミサイル開発は秘密に覆われている。そして、同国の指導者たちに最大限の恩恵をもたらすよう、ごまかしや虚報が長年プロパガンダの重要な部分を占めてきた。

 北朝鮮は3月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジンテストに成功し、同ミサイル搭載の弾頭の大気圏再突入に関する技術を習得したと誇示した。しかし、韓国と米国はその主張を疑っている。

 専門家によれば、北朝鮮の武器開発でより実現性が高い過程は、核弾頭を搭載する、より短距離のミサイルを完成させることだ。グアムへの到達能力を持つことで、米国に直接的な脅威を与えることができる。

 米ミドルベリー国際大学院のジェフリー・ルイス氏は、北朝鮮が試射を続けることで、いずれ米国を脅かすことのできる信頼度の高いムスダンを開発するだろうと述べた。「失敗はテストの一部になっている。北朝鮮は遅かれ早かれムスダンの問題点を修正するだろう」

 (Jack Kim記者、翻訳:高橋浩祐、編集:下郡美紀)