写真・図版 9月28日、衆院が解散され事実上、選挙戦がスタートし、争点の一つに憲法9条改正が浮上している。防衛省で幹部らを前に話をする安倍首相、11日撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

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 [東京 28日 ロイター] - 衆院が28日に解散され、事実上、選挙戦がスタートし、争点の一つに憲法9条改正が浮上している。安倍晋三首相は9条改正を自民党公約に盛り込む意向を表明。岸田文雄政調会長を中心に公約作りが急ピッチで進んでいる。

 しかし党内では「首相提案」に異論が残っているほか、憲法学者を中心に懸念も出ている。希望の党代表の小池百合子東京都知事は「理解に苦しむ」と批判しており、論争の行方が衆院選の動向に影響を与えそうだ。

 安倍首相は26日のNHKのテレビ番組で、自民党の公約作りに関連し「基本的には自衛隊の存在を明記する方向で議論が進んでいく」と述べた。

 自民党内では、10月10日の衆院選公示に向け岸田政調会長が公約取りまとめを指示し、10月2日以降に自民党公約のドラフトが作成される方向だ。同党内では、解散は最優先の政治的課題であり、安倍首相の提唱している方向で内容を確定させる方向になっている。

 ただ、石破茂・元幹事長は、安倍首相が提案している、9条1項、2項を残し自衛隊の存在を認める3項を追加することはこれまでの党内議論の方向性と違うとの主張を曲げていない。

 また、希望の党の小池代表も26日の都議会で「理解に苦しむ。憲法改正が目的化している」と述べ、安倍首相の方針に疑義を示した。

 解散・総選挙で騒然としている政界の議論とは別に、憲法や防衛問題に詳しい専門家の間では、憲法9条改正問題についてかなり鮮明な議論の対立が表面化していた。

 憲法学者の長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授は「自衛隊を(憲法に)明記するなら、その規模と活動範囲をどう条文に盛り込むのか次第で、その影響が大きく異なる」と指摘する。

 長谷部教授は、自衛隊の活動範囲が限定されない場合、世界のどこにでも、平和維持軍や有志連合などに加わって自衛隊が武力行使することが可能になり活動範囲を制限しない3項明記には、反対の立場を鮮明にする。そのうえで集団的自衛権は違憲であり、それを認めた憲法解釈を元に戻すべきと主張した。

 一方、篠田英朗・東京外国語大学・総合国際学研究員教授(国際関係論専攻)は、著書「ほんとうの憲法」において、「安倍首相が9条1、2項を維持したまま自衛隊の合憲性を明文化する改憲を行うべきだという考えを表明したのは、戦後日本の憲政史の大きな転機」だと評価する。

 そのうえで、自衛隊の合憲性を明確化するのであれば、9条の目指す目的である「国際法秩序の遵守を通じた平和」に即した存在であることが当然の前提であり、「9条1、2項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」と、簡易な規定だけを入れればよいとの意見。

 国際法が認める自衛権や集団安全保障の行使としての武力行使は、9条違反に当たらないという立場だ。

 ただ、金融・資本市場の関係者からは「多くの国民は、その問題点や意見の相違の実態をほとんど知らない。衆院選で理解が深まればよいが、消費税率の引き上げ・凍結問題など他の争点もあり、9条が主要な論争のテーマになるのか不透明だ」(国内金融機関の関係者)との声もある。

 9条改正問題が動き出すのかどうか、その行方は衆院選の結果にかかっている。

 

 (中川泉 編集:田巻一彦)