[シンガポール 20日 ロイター] ドル売り介入を続けるアジア諸国が、国内経済の低迷に対応するため、今後為替介入の手を緩めるとの指摘が一部で出ているが、市場では否定的な見方も多い。
主要国ではインフレよりも景気の低迷が深刻な問題との声が多く、韓国やマレーシアなどのアジア諸国も、輸出低迷に対応するため、自国通貨安を容認するのではないかとの見方が一部に出ている。
ただ、こうした見方には多くの前提条件が必要で、必ずしも市場参加者の支持を得ているとは言えない。
まず、原油は過去最高値から23%下落したが、原油高局面が終了したとは断言できない。インド、マレーシアなどではインフレ率が記録的な高水準にある。
米国の金融不安も再燃しており、今後もドル高が続くかどうかは不透明だ。
リーマン・ブラザーズのストラテジスト、サイモン・フリント氏は「インフレ抑制を重視する国は当面、比較的積極的に自国通貨安を阻止するだろう」と述べた。
これまでのところ、アジアの多くの中銀は、自国通貨安の阻止もしくは下落ペースの抑制に傾いている。
アジア諸国のなかで、自国通貨買い介入にもっとも積極的なのが韓国中銀。1ドル=1050ウォンの水準を防衛するため、7月は約150億ドルのドル売り介入を実施した。
インドネシア中銀も1ドル=9050─9250ルピアの水準を防衛するため、6月以降ドル売り介入を続けている。
ドルは7月中旬以降、円やユーロなど主要通貨のバスケットに対して7%上昇しているが、アジア諸国は、自国通貨の大幅な下落を阻止している。
ウォンの対円相場は1円=9.5ウォンで、1カ月前の9.6ウォンとほぼ変わらず。シンガポールドルの対円相場も7月中旬以降ほぼ変わっておらず、過去3カ月では2%上昇している。
<下落圧力強いとの見方も>
ただ、日欧経済がリセッション(景気後退)に突入すれば、アジア諸国の輸出のけん引役であるハイテク関連輸出は一段と落ち込む可能性がある。
台湾の貿易収支は2年ぶりの赤字。アジアの再輸出基地である中国の輸出も伸び悩んでいる。経済の対外開放が進んだシンガポール、香港は、輸出減少で第2・四半期の経済成長率がマイナスとなった。
原油の輸入依存度が高いアジア諸国では、インフレ沈静化の兆しはみえない。インドのインフレ率は13年ぶり、シンガポールは26年ぶり、マレーシアは27年ぶりの高水準だ。
韓国では、7月の輸入価格(ウォン建て)が前年比で50.6%急伸。市場関係者は、中銀のウォン買い介入は続くとみている。
ウエストパック銀行のストラテジスト、ショーン・キャロー氏は「原油など商品価格の下落がインフレ率に影響したことを確認するまでは、介入の手を緩めることはできない」と述べた。
ウエストパック銀行は、ウォンが20日の水準を4%上回る1ドル=1003ウォンまで上昇すると予測。ドルは第4・四半期中に伸び悩む展開になるとの見方を示した。
市場では、インドネシアも、自国通貨安を容認しないとの見方が多い。
リーマンのフリント氏は「(インドネシアでは)インフレが深刻な問題だ。経済成長の見通しに問題はなく、介入資金も十分にある」と述べた。
ただ、輸出減速・経常赤字拡大・ドル高を受け、今後は、アジア諸国による自国通貨防衛は難しくなるとの見方もある。
国内政策がリスク要因との指摘も出ている。政府が利上げに反対したり、インドネシアやインドでは来年の選挙を控えて、ばらまき型の経済対策が打ち出される可能性もある。
HSBCは、アジアの債券市場に資金が流入する可能性はあるが、リスクの高い株式やクレジット商品などは敬遠されるのではないかと指摘している。
HSBCは「アジア通貨を動かす要因は変わる可能性があるが、多くの国の通貨は下落圧力が根強い」とし、人民元以外の大半のアジア通貨について弱気な見方を示した。人民元については、上昇ペースが緩和すると予測している。
(ロイター日本語ニュース 原文:Vidya Ranganathan、翻訳:深滝 壱哉)