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【スパイシー!ソウル】
 
看板に見る韓国

(写真上)〈1〉経営者の笑顔がうり(写真下)〈2〉「TVに出た」と大宣伝
(写真上)〈1〉経営者の笑顔がうり
(写真下)〈2〉「TVに出た」と大宣伝

(写真上)〈3〉著作権は大丈夫?<br>(写真下)〈4〉「房」って、なあに
(写真上)〈3〉著作権は大丈夫?
(写真下)〈4〉「房」って、なあに

(写真上)〈5〉色っぽいね、この文句<br>(写真下)〈6〉占いも目立ったほうが…
(写真上)〈5〉色っぽいね、この文句
(写真下)〈6〉占いも目立ったほうが…

〈7〉スパイを通報せよ
〈7〉スパイを通報せよ

鄭 銀淑(チョン・ウンスク) プロフィール

 おなじみのファストフードやコンビニのロゴに彩られ、一見するとあまり変わりがないように見える韓国と日本の繁華街も、看板をひとつひとつ細かく見ていくと、その表現方法にはずいぶんと違いがあります。今回は、日本とはひと味もふた味もちがう韓国の看板を紹介します。

 ○この人、誰?

 飲食店の看板には、創業オーナーが臆面もなく登場しているものが少なくありません。韓国にも「お客さまは神様です」という言葉はありますが、どう見ても「経営者が神様」のように見えてしまうのがこの種の看板です。脱北者のキム・ヨンさんが創業した北朝鮮料理店チェーン「牡丹閣」の看板(写真〈1〉)は、キムさんのさわやかな笑顔が好印象です。しかし、「創業ン十年〜」をうたった某牛骨スープ店や某タコ料理店チェーンの看板には、顔に深い年輪の刻まれたハルモニ(おばあちゃん)の巨大写真が掲示されていて、初めて見る外国人はびっくりするようです。ある日本人には「新興宗教の教祖ですか?」と聞かれたこともありました。

 ○テレビ至上主義

 ソウルを訪れたことがある日本人なら、繁華街で、KBS、MBC、SBSの文字が踊っている看板を見たことがあるのでは? これは韓国のテレビ局の略称で、ずばり「ウチの店、テレビに出ました!」と自慢しているのです。韓国では店頭にTVに出たという貼り紙を出すだけでなく、看板そのものを塗り替えてしまうことも珍しくありません(写真〈2〉)。この店はキャスターの写真まで載せています。以前、日本人向けのグルメ本取材のとき、この種の看板を見るたびに日本人編集者はあきれていました。でも、「秘すれば花」の発想が乏しい韓国では、ごく普通のことです。もちろん、この種の看板を出していても美味しい店は美味しいので、みなさん誤解なさらぬように。

 ○名画座ではありません

 看板左側から『ヨンジャの全盛時代』『馬鹿たちの行進』『ポン(桑の葉)』(写真〈3〉)。いずれも70年代から80年代を代表する韓国映画の看板です。ただ、右側の赤白の文字は「練炭クイ テポチプ」と書かれています。これは90年代末から流行している懐古趣味の練炭焼き肉屋の看板で、古い映画、練炭の火、テポチプ(昔の一杯飲み屋の呼称)で、店のイメージを表しています。『自由婦人』という50年代の不倫映画のタイトルをそのまま店名にして、店頭に映画看板をそのまま再現した焼肉店もありました。日本人の感覚だと「許可もらってるのかな?」などと心配になりますね。韓国ではかつて「チャーリー・チャップリン」という名の店が訴えられたことはありますが、あまり神経質に考えないようです。

 ○PCバン、ノレバン、漫画バン……。バンって何?

 韓国語を勉強し始めた日本人にとって、ハングルの看板をひとつひとつ読みこなしていくのは楽しいようです。そんな人からよく出る質問が「バンって何?」。バンは漢字で「房」。○○屋、○○店といったように商業施設に使われています。

PCバン(写真〈4〉)→ネットカフェ、ノレ(歌)バン→カラオケボックス、ソジュ(焼酎)バン→焼酎居酒屋、漫画バン→マンガ喫茶といった具合です。李氏朝鮮時代にはアン房(女性部屋)、サラン房(客間)、ヘラン房(使用人部屋)など、排他的で閉鎖的な空間を指す言葉でした。現代では「誰にも干渉されない自分だけの空間」という意味でしょうか。

日本ほど個人主義が浸透していない韓国では、個人と家族、地域、国家の結びつきがまだまだ強く、それは安心感と同時に息苦しさをもたらします。現代の「房」は、そうした息苦しさから逃れるためのオアシスなのかもしれません。

 ○泥臭いお色気

 全羅南道の木浦市にある団欒酒店の看板(写真〈5〉)は、「団欒」という言葉から、家族で利用するような店を想像するかもしれません。が、実は日本のキャバクラのような飲み屋さんです。店名と思われる青い文字は「ナムジャマンドゥルギ」。ナムジャは「男」、マンドゥルギは「作り」という意味なので、直訳すれば「男作り」です。この場合は「(お客様を)男にする」とか「(夜遊びで)男を磨く」といったニュアンスで、韓国男性の耳にはかなりお色気のある表現に聞こえます。日本より性表現の規制が強い韓国で、この泥臭く直接的な店名をつけるとは、遊興文化が発達した木浦ならではと言えるでしょう。

 ○あやしい卍看板

 韓国の夜景には、教会の真っ赤な十字架ネオンが目立ちます。一方で、シャーマニズムを背景にした占い師も、卍マーク(写真〈6〉)で自己主張に余念がありません。韓国では、仕事、結婚など何かにつけて占い師に相談する人が多いので、繁華街を歩けば容易に占い師の店を見つけることができます。近々、日本で公開される韓国映画『殺人の追憶』でも、田舎刑事が、犯人がどこに隠れているか占い師に相談するというマヌケなシーンが出てきます。

 ○スパイ申告

 最後に紹介するのは商業看板ではありません。全文を訳すと「左翼暴力を追放して、民主安定を成そう。間諜申告は112・113へ 珍島警察署」となります(写真〈7〉)。珍島は全羅道の南端にある島で、北朝鮮から遠く離れたこんな田舎の町にも工作員の申告を奨励する看板が残っています。2000年に南北の両首脳が握手し、さまざまな南北交流事業が行われ、昨年は一般人の平壌観光まで実現しました。でも、これもまた韓国の現実なのです。 (04/03/01)


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