2008年4月18日
ソウルや釜山からわざわざ訪れる人も少なくない韓国最古のマッコルリ酒場「三江(サムガン)酒幕」。手前の古木は開業当時から酔客たちを見つめ続けている
改装された外観は観光施設風になってしまったが、内部の厨房跡には女将がツケの金額を壁を削って記録した傷が残る。現在はこの土地の老人会長夫妻が店を切り盛りしている。マッコルリやつまみの下ごしらえで、床につくのは夜中の2時だという
やかんにたっぷり注がれた手製のマッコルリに、そば粉の寒天、豆腐、白菜とネギのジョン、キムチが付いて12000ウォン。営業時間は朝10時から日暮れ(19時〜20時頃)まで。無休
浦項市内のチュクド市場にあるコムタンの食堂。テジクッパプ(豚肉の汁かけ飯)の豚肉をつまみにマッコルリをいただき、その後でご飯とスープをかきこむのが楽しい
新宿区大久保で開かれたマッコルリの利き酒大会では、多彩な銘柄が一堂に会した。地元のマッコルリしか飲まない韓国では、なかなか見られない光景だ。主催は豚焼肉専門店「てじまぅる」の金在浩さんと、アサヒコムで「コリアうめーや!!」を連載している八田靖史さん
利き酒大会は10種類のマッコルリを試飲して、銘柄を当てるという形式で行われた。すべてを的中させた人もいたというから驚きだ
ソウルからは失われつつある“韓国らしさ”を求めて、地方の大衆酒場を訪ね歩く「マッコルリの旅」を今も続けています。
最近の大きな収穫は、慶尚北道の禮泉(イェチョン)にある韓国最古のマッコルリ酒場「三江酒幕」との出合いでした。約100年の歴史をもつこの店は、大邱方面とソウルを結ぶ洛東江のほとりにあります。かつては渡し船が行ったり来たりしたり、塩や農産物を運ぶ船が停泊したりしたところで、商人や旅人、船乗りたちが集まったにぎやかな場所でした。70年代になって橋がかかり、陸上交通が発達すると、だんだんさびれてきましたが、酒場だけが生き残ったというわけです。
1932年に船乗りと結婚して以来、この店を守ってきた女将ユ・オクリョンさんは残念ながら3年前に亡くなり、酒場も消えるかと思われましたが、長年の風雪に耐えてきた建物が民俗資料に指定され、昨年から新しい女将を迎えて営業を再開しています。新生「三江酒幕」は屋根が新たに葺き直され、観光民俗村で見られるような外観になってしまったのが少々残念ですが、それでも、昔の酒場の雰囲気を味わうには十分な風情があります。
東海(日本海)に面した慶尚北道最大の都市・浦項(ポハン)。ここに植民地時代の日本家屋が多く残っていると聞いて訪ねてみたところ、マッコルリが似合う店が何軒かありました。なかでも市内の竹島(チュクド)市場の路地にあるコムタンの食堂街は、昼間からマッコルリを軽くひっかけるのにぴったりの雰囲気でした。ランチタイムのOLやサラリーマンたちの楽しげな会話を聞きながら、マッコルリをすするのはなかなかいいものです。
清酒、焼酎、ワイン、ビール、ウイスキーなど内外のさまざまなお酒が深く広く浸透している日本でも、マッコルリの存在感は確実に増しているようです。日本の事務所からの報告によれば、2月には東京大久保のコリアンタウンで、マッコルリを利き酒するイベントが開かれ、盛況だったそうです。韓国では銘柄にこだわらずに飲むマッコルリを利き酒するとは、文化的に成熟した日本らしい試みだと思います。
1967年生まれ。世宗大学院修士課程修了後、日本に留学。訳書に 『宮廷女官 チャングムの誓いのすべて』、 『家庭で作れる「チャングム」の韓国宮廷料理』、 『コリアン・ダイエット』(光文社)。 著書に『マッコルリの旅』(東洋経済新報社)、『韓国・下町人情紀行』(朝日新聞社)、 『韓国の美味しい町』(光文社)、 『韓国の「昭和」を歩く』(祥伝社)、 『韓国料理用語辞典』(日本経済新聞社)、 『一気にわかる朝鮮半島』(池田書店)など。 鄭銀淑のページ