2008年7月7日
エイ料理をつまみにマッコルリを飲ませる、東大門市場近くの居酒屋。韓国ではカウンターがある居酒屋のほうが珍しい
日本の小さな居酒屋で韓国のマッコルリを見つけて喜ぶ筆者(左)
韓国での仕事が忙しく、なかなか日本に行けない私が恋しくてたまらないのが大衆酒場です。日本では昔ながらの個人経営の居酒屋がちょっとしたブームになっているようですね。知人が送って来てくれる居酒屋の雑誌や居酒屋紀行の本を眺めながら、韓国にはない日本の居酒屋の魅力について考えてみました。
●一人でゆっくり楽しめる
日本ではほとんどの居酒屋にカウンターがあり、一人でもゆっくり飲めるようになっています。私は何年か前、東京赤羽の有名店「まるます家」で、中高年男性が昼間からカウンターでゆっくり、おいしそうにビールを飲んでいる様子に、韓国にはない解放感を感じ、カウンターに陣取るのが大好きになりました。韓国では「一人飯、一人酒はさびしい」という意識が強いので、会社員のランチでさえ仲間と一緒に行こうとします。民俗酒場が集まっている仁寺洞のある店では「男の一人客は縁起が悪い」と、入店を拒否する店も存在します。とはいえ、おばあさんが一人でやっている地方のマッコルリ酒場などでは、一人客だとあれこれかまってくれるので、それはそれで楽しかったりします。
●自分のペースで飲める
韓国では老いも若きも“一気飲み”が潔いというムードがいまだにあります。難しい話は抜きにしてみんなで一斉に酔うのも楽しいのですが、人生も中盤を迎えるようになると、少々身体にこたえます。日本の居酒屋ではただ酔うためだけでなく、清酒や焼酎などさまざまな酒と銘柄をじっくり味わい、その酒に合った料理をいただくという楽しみがあります。また、韓国では大皿料理をみんなでつつきながら飲むのが普通ですが、日本では小皿料理が多く、いろいろな味を少しずつ楽しめるのがうれしいですね。日本に留学していた20代の頃はそれを「ケチくさい」と思ったのですが、最近はそのよさがわかってきました。
●年輩者の接客が心地よい
日本の居酒屋でご主人のおじいちゃんとカウンター越しに話をしながら飲むのも大好きです。私が外国人なので珍しがって話し相手になってくれるのかもしれませんが、特にその町の歴史やご主人のふるさとの話を聞けるのがうれしいですね。韓国では飲食業に対する偏見が残っているせいか、飲食店で年輩のオーナーが接客に当たる機会が日本と比べて少ない。接客は若者や女性にまかせて、会計カウンターでふんぞりかえっているオーナーが目立つのです。「いい歳をして酔客相手にへいこらするなんてみっともない」という、悪しき儒教精神の名残が商人精神の発達を妨げていると思います。
ああ、早く仕事を一段落させて、日本に行きたい。日本の居酒屋に飛び込んで「とりあえず生ビール!」と言ってみたい鄭銀淑でした。
1967年生まれ。世宗大学院修士課程修了後、日本に留学。訳書に 『宮廷女官 チャングムの誓いのすべて』、 『家庭で作れる「チャングム」の韓国宮廷料理』、 『コリアン・ダイエット』(光文社)。 著書に『マッコルリの旅』(東洋経済新報社)、『韓国・下町人情紀行』(朝日新聞社)、 『韓国の美味しい町』(光文社)、 『韓国の「昭和」を歩く』(祥伝社)、 『韓国料理用語辞典』(日本経済新聞社)、 『一気にわかる朝鮮半島』(池田書店)など。 鄭銀淑のページ