現在位置:asahi.com>国際>国際支援の現場から> 記事 タイのモン族難民:強制送還におびえる人びと2008年05月03日 国境なき医師団@タイ タイ北部のペッチャブン県のファイ・ナム・カオ村にある難民キャンプには、2007年半ばの時点で、ラオスから避難してきた約7500人のモン族難民が身を寄せている。モン族の人びとはベトナム戦争時に米軍支援の目的でCIAに徴兵されたことから、1975年にラオスで共産主義政権が樹立して以来ラオス国内で迫害を受け、その多くがタイへと逃れた。彼らは今なお、ラオス国内では人里離れたジャングルに身を隠し続け、タイに逃れた難民は劣悪なキャンプで苦しい生活を送っている。国境なき医師団(MSF)は2005年7月からファイ・ナム・カオ村のモン族難民に対し、医療ケア、心理社会的ケア、食料・救援物資の提供や、水・衛生環境整備などの援助を行っている。しかし、タイ政府はモン族の人びとの難民認定を拒否し、2008年末までに強制送還を実施する意向を明らかにするなど、彼らの現状は日増しに悪化している。
(1)ファイ・ナム・カオ村のキャンプの様子。過密状態にあるこのキャンプでは、一人当たりのスペースはわずか12平方メートルで、人びとは食事もトイレの近くでせざるを得ない。ここで暮らす人びとには、住居や食べ物、清潔な水や医療ケアを手に入れる手段もない。このような住環境では、下痢やコレラなどの感染症が流行する危険性が非常に高い。 (2)わずか10メートル程の道路沿いの両脇にも、モン族難民たちの住居が広がっている。母国ラオスで受けた暴力や迫害から逃れてファイ・ナム・カオ村で暮らすモン族難民たちは、強制送還を恐れて明日をも知れぬ身を案じて脅えている。2005年12月には、この村で暮らしていた27人のモン族難民の子どもが、タイ警察により逮捕され、ラオスに強制送還された。 (3)MSFの診療所。1日あたり約80人のモン族難民の診察を行っている。呼吸器感染症、気管支炎、肺炎が主な疾患である。しかし診察の際に患者たちが主に訴えるのは、保護してほしいという要望である。難民の中には、この状況により強いストレスや精神的苦痛を受ける人もいる。MSFはこのような人びとに対する心理ケアも実施しているが、強制送還からの保護という要望に応えることはできない。 (4)ファイ・ナム・カオ村のキャンプで暮らすモン族の女性。MSFのタイにおける活動責任者であるジル・イザールは語る。「モン族の難民たちは、自分たちがいかにラオスへの強制送還を恐れているかを常に話しています。今も、迫害と暴力から逃れるために後にしてきた母国ラオスに今日にも送還されるのではないかと日々脅えて暮らしています。送還後の身の安全について何ら信頼出来る保証がないからです。」 (5)2007年5月、タイ、ラオスの両政府は「ラオス・タイ国境安全委員会」を設置し、タイ政府は保護を求めるモン族の難民が到着次第、ラオスへ強制送還することが可能となった。さらに9月、タイ政府は2008年末までに第三者機関による難民申請プロセスを行わずに、ファイ・ナム・カオ村で暮らすモン族難民の強制送還を実施する意向を明らかにした。MSFは、モン族難民の強制送還手続きを停止し、彼らの難民申請において第三者機関の介入を認めるよう、タイ政府に要請している。
MSFのモン族難民に関するプレスリリースはこちらから。 モン族難民のキャンプで活動を行った日本人派遣スタッフの声はこちらから。
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