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シリア、医療危機の打開急務

2012年11月5日

  • 国境なき医師団@シリア

写真爆撃により破壊されたシリア西部の都市ホムスの住宅地写真シリア南部のイドリブ県で治安部隊に焼き払われた移動病院写真北部シリアに設置した仮設病院で外科治療を行う医師写真北部シリアにMSFが設置した仮設病院。郊外の空き家を利用した写真MSFは、シリア難民に心のケアを提供する活動も行っている写真ヨルダンの首都アンマンでMSFが企画したパーティー。内戦で負傷したシリア人の子どもたちが「犠牲祭」を祝った(2012年 ロイター)

 政府と反体制勢力の内戦状態が続くシリア。イスラム教の大祭「犠牲祭」期間中の停戦に向けた取り組みも失敗に終わりました。戦闘によって市民にも犠牲者が出る中、シリア政府は公立病院を監視下におき、負傷者と医療従事者を弾圧しました。また紛争を避けて既に多くの人びとが難民として周辺国に逃れましたが、その多くは過密状態で暮らし、精神的苦痛や身の安全に関する不安を抱えながらの生活を送っています。

■公立病院で患者や医師を迫害

 政府の監視下に置かれた公立病院では、入院患者はすべて治安部隊や病院内の体制支持者に把握されてしまいます。昨年末から国境なき医師団(MSF)が集めた証言によると「革命活動に参加したのだから、おまえの脚を切除してやる」と言われた患者もいます。傷ついた手足を治療する価値がない、あるいは手足そのものが必要ないと判断されて切断手術をされたという証言もありました。公立病院には設備も薬も整っていますが、負傷者は公立病院を頼ることができず、また反体制派の患者を治療したことで、医師が逮捕されるという事態も起きました。

■「治安部隊が移動病院を攻撃し、医療物資を奪っていくのです」

 政府軍の目を逃れて、負傷者が治療を受けたのは、医療従事者らが農場などに設置した「移動病院」と呼ばれる簡素な外科施設です。衛生状態が悪く、最低限の医療物資さえ不足するそのような施設でさえ、常に政府軍からの攻撃の恐怖にさらされ続けたのです。ある医師は「治安部隊が移動病院を攻撃し、破壊していくのです。連中は住居に押し入り、薬剤と医療物資を探しまわります」と、恐怖が支配する状況を語っていました。そのような環境で秘密裏に医療活動を続ける医師たちにとって、最大の懸念は身の安全であり、実際に多くの医師が治安部隊により逮捕され、拷問を受けたのです。

■シリア政府の公認を待たず医療活動に踏み切る

 「シリア政府は医療の場を迫害の道具として悪用することを今すぐに止め、医療活動を尊重するよう強く求める」。MSFは今年2月、シリア政府に対する声明を発表しました。それ以来、シリア国内での負傷者の援助について公式の活動認可を求めていますが、依然として認可は下りていません。そのような状況の中、MSFは6月にシリア人医師グループと連携し、郊外の空き家を利用した仮設病院の開設に踏み切りました。シリア当局の認可がないまま、MSFは9月末までの3カ月で、この仮設病院で1100人以上を治療し、260件以上の外科処置を行いました。また、シリア赤新月社にも医療物資を提供しています。

■希望の見えないよそ者――苦難続くシリア難民

 現在、約33万人※のシリア難民が、紛争を避けて周辺国へ逃れたとみられています。MSFはシリア国内の活動認可を待つとともに、シリアと国境を接するヨルダン、レバノン、イラクなどで難民を対象に医療を提供しています。さらに、ヨルダンの首都アンマンでは、紛争による負傷や、紛争の間接的な影響で治療を受けられない患者を中東各地から移送し、長期視点に立った外科治療や心理ケアなどを組み合わせて提供しており、現在は患者の半数近くがシリア人となっています。

 レバノンでMSFが行った聞き取り調査によると、難民の半数以上はレバノン到着後も、望んでいた安全な環境が見つからないと答え、9割が先行きを非常に不安に感じていると答えるなど、難民生活を送る人びとの多くは「将来に希望がなく、ここではよそ者でしかない」と感じ、一方で帰国の実現可能性も疑問視していることが浮き彫りになりました。

 レバノン国内に滞在中の多くのシリア人難民にとっては、人道援助が頼みの綱となっています。ただ、現在、地域社会、政府、人道援助団体による複合的なサポートによって実現されている援助が縮小される可能性や、長期的な援助計画がないことをMSFは懸念しています。それらの問題点は難民の健康危機に結びつく恐れがあるため、シリア人難民と彼らを受け入れている地域社会への継続的な援助が必要となっています。

※出典:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)2012年10月5日付発表

★☆★ インフォメーション ★☆★ 

■締め切り迫る! 国境なき医師団(MSF)日本主催イベントのお知らせ■

MSF日本は、11月で事務局創設20周年を迎えることを機に、人道援助活動において直面する障壁や交渉を取り上げた書籍『人道的交渉の現場から 国境なき医師団の葛藤と選択』を出版します。

本書出版に伴い、MSFの原理を損なわないよう活動する上でのジレンマや挫折など、「人道的介入」について考察する講演会およびパネルディスカッションを、来る11月14日、15日に開催します。

参加は無料です。ぜひご参加ください。詳細はこちら

【あなたの寄付でできること】 

○3,000円で、外科手術のための麻酔を1回分提供できます。

○5,000円で、感染から守る抗生物質による治療を20人のけが人に提供できます。

○10,000円で、治療に必要な包帯セット50個を提供できます。 

○30,000円で、緊急外科手術用キット1セットを用意できます。 

○毎月1,500円で、毎月60人の人びとに基礎医療を提供できます。

■「毎月の寄付」■ 

 1日あたり50円、または任意の金額を、1カ月ごとに口座から振り替える継続的な寄付の方法です。安定した資金が確保できるため、緊急事態への迅速な対応や、より長期的な視野に立ったプログラムづくりを可能にする支援方法です。ぜひご参加ください。お申し込みはこちら。 

■ファミリーマートでも寄付ができます■ 

 MSFへの寄付が、全国のファミリーマートに設置されている「Famiポート」から、24時間いつでも手軽にできるようになりました。寄付額は1000円、3000円、5000円、10000円からお選びいただけます。手数料はかかりません。「Famiポート募金」はこちら。 

■新しい寄付の方法が加わりました!■

インターネットで寄付を申し込んでいただいた場合、クレジットカードでのお支払いに加えて、インターネットバンキングやコンビニエンスストアでのお支払いもお選びいただけるようになりました。携帯電話やスマートフォンからは、電子マネー(Edy、Suica、iD)もご利用いただけます。くわしくは、こちらをご覧ください。

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■活動参加に関心をお持ちの方へ■

 MSF日本では、海外派遣に参加するスタッフを常時募集しています。募集職種は、医師や看護師など医療従事者だけでなく、ロジスティシャン、アドミニストレーターなどの非医療従事者も対象になります。詳細はこちら

☆派遣スタッフ募集説明会のご案内☆

東京説明会:11月30日(金)18:30−20:15 定員50名

派遣麻酔科医による活動報告を行います。

会場:国境なき医師団日本事務局 [地図

(駐車場はありませんので、自家用車での来場はご遠慮ください)

お申し込み

沖縄説明会: 12月22日(土)14:00−16:00 定員20名

派遣外科医による活動報告を行います。

会場:那覇市ぶんかテンブス館 第1会議室 [地図

お申し込み

※沖縄在住で、2013年4月頃までに派遣の開始が可能な方は、沖縄説明会までに書類審査を行い、通過された場合、説明会前後の日程で面談(那覇市内)を行うことができます。求める人材/募集職種と採用プロセスと応募方法をご確認の上、2012年11月17日までに応募書類をemailでご送信ください。

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