【カイロ=北川学】エジプト軍最高評議会のシーシ議長(国防相)は3日夜(日本時間4日未明)、現憲法を停止し、最高憲法裁判所のマンスール長官が暫定大統領として国事を行うと国営テレビを通じて発表した。昨年6月の大統領選で同国初の文民大統領となったイスラム系のムルシ氏について、ロイター通信は当局に拘束されたと報じた。軍がクーデターに踏み切り、排除した形だ。
ムルシ大統領に関する記事シーシ議長の発表には、野党勢力指導者のエルバラダイ国際原子力機関前事務局長やイスラム教、キリスト教の指導者らが同席、各界の支援を得た措置であることを強調した。ただ、文民が暫定統治を担うものの、軍が背後で監督するとみられ、2011年2月にムバラク政権崩壊に追い込んだ「アラブの春」による民主化の後退は否めない。
シーシ議長は、次期大統領を選出するまでの「ロードマップ(行程表)」を発表した。それによると、暫定大統領の下に「実務者内閣」を設けるとしたうえで、すべての政治・社会勢力を集めた憲法改正委員会をつくって憲法を改正し、早期に大統領選を実施すると説明した。その後、選挙法を改正したうえで国民議会(下院)選挙を行うとしている。
シーシ議長は「軍はムルシ氏に対し、すべての政治勢力との対話を繰り返し求めてきたが、何度も拒否され、48時間の期限も切れたために、こうした措置を取った」と説明した。軍は1日、デモによる混乱を収拾させるため、ムルシ氏に対して各政治勢力と48時間以内に合意することを求め、できない場合は軍主導のロードマップを発表するとしていた。
一方、地元メディアによると、ムルシ氏の出身母体のイスラム組織「ムスリム同胞団」のバイユーミ、シャーテル両副団長、同胞団系の自由公正党のカタトニ党首らも拘束された。
地元メディアによると、軍は3日夕以降、都市部の要衝や、ムルシ氏支持者のデモ会場周辺に戦車や装甲車を出動させ、厳戒態勢を取った。軍や警察は今後、大統領選や議会選までに、民衆に根を張る同胞団の抑え込みを図るとみられる。しかし、同胞団は100万人以上のメンバーを抱えており、抗議行動が広がり、治安当局と衝突する可能性もある。
AFP通信によると3日夜、北部アレクサンドリアなどで親ムルシ派と反ムルシ派のデモ隊が衝突し、少なくとも10人が死亡した。
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〈クーデター〉 フランス語で、「国への一撃」の意味。軍などが武力で権力を奪取するような政変を指す。エジプトでは1952年7月23日、「自由将校団」がクーデターを起こして国王を追放。翌年、共和制に移行した。
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朝日新聞国際報道部