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定森 大治(論説委員)
イラクのフセイン政権が崩壊して半年がすぎても米英による占領統治の出口が見えない。泥沼にはまったパレスチナ情勢は、イスラエルがシリア領も標的に加え、紛争拡散の様相を見せている。
中東の安定化はどうなったのか。
「現在の(中東)危機に対処するため、新思考を編み出すことが不可欠だ。そのためには強固で効果的なアラブ内協力を拡大しなくてはならない」
エジプトの主要紙アルアハラムのイブラヒム・ナフィ論説主幹は、アラブ世界で深刻化する二つの危機について、そう呼びかける論調を掲載した。
たしかに、これだけ中東が緊張しているのに、アラブ世界からの声はあまりにも少ない。国連総会でも、首脳級の欠席が目立ち、イラクにせよパレスチナにせよ、アラブからのイニシアチブと思えるような演説は聞かれなかった。残念なことである。
イラク情勢に関して言えば、アラブ連盟は米英の暫定占領当局がつくったイラク人の統治評議会に当面の代表権は認めたものの、連盟として同胞イラクの復興にどのように取り組んでいくか、という処方せんはなにも示していない。
アラブ諸国はイラク戦争に反対したのだから、米英軍の不当な占領に協力する理由は何もない、ということだろう。それに加えてエジプト、ヨルダンなどの政権は軍事・経済両面で対米依存の体質が強い。サウジアラビアなどの湾岸産油国もイスラム過激派の取り扱いで米国と表面上は対立しているが、国防という肝心な部分で米軍頼みである現実は変わらない。
だが、歴史が物語るように、イラクの将来はアラブ諸国の将来にも大きな影響をもたらすものだ。現状を放置しておくだけでいいのか。
アラブ首長国連邦(UAE)はこのほど、イラクの復興支援に共同で取り組むよう周辺諸国に呼びかけた。「占領統治を支援するのではなく、イラク新政権の早期樹立で米英軍の撤退を早めるため」に必要だ、との理由からである。
わかりやすい論理だ。イラクがこれ以上混乱すれば、難民流出などで周辺国にも被害が及ぶ、との現実的な懸念も背景にはあるのかもしれない。
UAEの呼びかけに同調できない国もあるだろう。しかし、内向きになるのではなく、イラクの将来に関するアラブ独自の構想を練ってみてはどうか。
何もできないアラブというレッテルを貼りたくない。レバノン紛争の際には、サウジアラビアをはじめとするアラブ諸国が、国連の枠組みから離れた調停工作で内戦終結をもたらしたではないか。
イラクの新政権づくりに協力できるところは協力し、国際社会への復帰をまずアラブ地域で達成できるようにする。
そうした積極姿勢こそが、米国で広がる「アラブ世界の民主化推進」という一方的な圧力に対抗する方法だろう。
サウジアラビアがこのほど、向こう1年以内に地方議会選挙を実施するとサウジ国営通信が報じたのは、米国の圧力に屈したと言うよりも、サウジ国内の3度にわたる有識者グループによる民主化要求に応じざるを得なかった、とみるのが自然だろう。
アラブ諸国の政権は、それぞれの国内で統治の正統性を問われている。民主化と縁遠かったサウジですら民意を汲まざるをえなかったというのは、アラブ世界内部でイスラムに基づく統治の軌道修正の試みが始まっている、との評価を与えてもいいのではないか。
アラブの民主化はアラブ人の手で、という心意気を対外的に発信すること。それこそが、9・11以降のアラブ・イスラム世界に対する批判を乗り越え、アラブ独自の統治のあり方を世界に知らしめる方法であろう。
(03/10/23 15:51)
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