イタリア映画祭2007

最新未公開イタリア映画

program A
犯罪小説
(2005年/146分) 監督:ミケーレ・プラチド
Romanzo criminale (Michele Placido)

不良少年たちの一味が成長してローマの裏社会を仕切るギャングとなり、次々と犯罪に手を染める・・・70〜90年代にかけてイタリアで実際に起こった事件を絡め、チンピラたちのはかない夢物語を描き出す。キム・ロッシ・スチュアート、ステファノ・アッコルシ、ジャスミン・トリンカなど豪華キャストに注目。監督はベテラン俳優のミケーレ・プラチド。06年ベルリン映画祭のコンペ部門に出品され、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で脚本賞など8部門を受賞。

program B
私たちの家で
(2006年/101分) 監督:フランチェスカ・コメンチーニ
A casa nostra (Francesca Comencini)

現在のミラノを舞台に、銀行家、娼婦、財務捜査官、モデル、年金生活者などさまざまな職業、階級の人々が織りなす人間模様を、『ママは負けない』(「イタリア映画祭2005」などで上映)で高い評価を受けたコメンチーニ監督が、ルカ・ビガッツィの静謐なカメラによって丹念に描いてゆく。お金が一番の価値を持つ現代社会に何とか抵抗しようと戦う人々の人間回復の物語。ヴァレリア・ゴリーノが女性財務捜査官を熱演。第1回ローマ映画祭コンペ出品。

program C
家族の友人
(2006年/110分) 監督:パオロ・ソレンティーノ
L'amico di famiglia (Paolo Sorrentino)

高利貸しの老人ジェレミアは、容姿も性格も酷いうえに吝嗇で計算高く、借り手の生活に否応なく立ち入る。しかし自分では、金に困った「家族の友人」として、善良で社会に貢献しているものと信じて疑わない。その彼に、しがない夫婦が美しい娘の結婚資金を借りたことから、物語はまったく予想外の方向へ向かう。この作品で軽妙さとアイロニー、異様さと喜劇性を極限までつきつめた鬼才ソレンティーノは、現代のアントニオーニとも評された。06年カンヌ国際映画祭出品。

program D
気ままに生きて
(2006年/108分) 監督:キム・ロッシ・スチュアート
Anche libero va bene (Kim Rossi Stuart)

キム・ロッシ・スチュアートが監督に初挑戦した作品で、06年カンヌ国際映画祭の監督週間で紹介され、フランスで大ヒットした。11歳の少年トミーは父・姉と、家出した母の帰りを待つが、母は突然帰ったり、また消えたりとつかみどころがない。いらいらする父と気性の激しい母に挟まれ、成長期で多感なトミーは孤独と向き合う術を学んでいく。父親役はキム自身が演じ、奔放な母親役は、昨年上映された『見つめる女』『聖なる心』で一気に人気を集めたバルボラ・ボブローヴァ。

program E
カイマーノ
(2006年/112分) 監督:ナンニ・モレッティ
Il caimano (Nanni Moretti)

ナンニ・モレッティが総選挙の行われた2006年に放ち、議論を巻き起こした渾身の一作。公私共に行き詰まったプロデューサー(シルヴィオ・オルランド)の元に、監督を志す新人(ジャスミン・トリンカ)が脚本を持ち込む。ベルルスコーニ首相を糾弾する内容のその映画を、ある勘違いから製作する羽目に陥るが、案の定問題が続発し・・・。カンヌ国際映画祭のコンペ部門に出品され、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では作品賞、監督賞など6部門を制した。

program F
わが人生最良の敵
(2006年/115分) 監督:カルロ・ヴェルドーネ
Il mio miglior nemico (Carlo Verdone)

昨年の「イタリア映画祭」で好評を得て劇場公開が決まった『イタリア的、恋愛マニュアル』の小児科医役で抱腹絶倒の演技を見せたカルロ・ヴェルドーネは、自身が多くのコメディを手がけてきた映画監督でもある。本作ではホテルの支配人役で自ら主演し、『恋愛マニュアル』の恋に落ちる青年役、シルヴィオ・ムッチーノ演じる若者と対決。母親がホテルに解雇され怒った若者が、復讐のため支配人の浮気現場の証拠写真を手に入れたことを発端に、壮絶なバトルが始まる。

program G
N‐私とナポレオン
(2006年/110分) 監督:パオロ・ヴィルツィ
N -- Io e Napoleone (Paolo Virzi)

「イタリア映画祭2005」で絶賛された『カテリーナ、都会へ行く』のヴィルツィ監督の新作。1814年、エルバ島に流されたナポレオンは島民たちに熱烈な歓迎を受ける。しかしそれを快く思わないマルティーノは、暗殺を企てた。ナポレオンの新解釈としてイタリアで話題を呼んだ小説『N』の映画化で、ナポレオンをフランスのダニエル・オートゥィユが、2人の男の間を揺れるエミリア男爵夫人をモニカ・ベルッチが演じる痛快な喜劇。第1回ローマ映画祭で喝采を浴びた。

program H
新世界
(2006年/120分) 監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
Nuovomondo (Emanuele Crialese)

「イタリア映画祭2003」で上映された『グラツィアの島』が鮮烈な印象を残したクリアレーゼ監督の第2作。20世紀初頭にシチリアのアグリジェントから移民船でアメリカに向かう一家族を中心に、その希望と絶望をタヴィアーニ兄弟の初期作品を思わせる幻想的タッチで描く。昨年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を得て、本年アカデミー賞のイタリア代表となった。一家に近づく謎のイギリス貴族の娘を演じるシャルロット・ゲンズブールにも注目。

program I
ヴィットリオ広場のオーケストラ
(2006年/90分) 監督:アゴスティーノ・フェッレンテ
L'orchestra di Piazza Vittorio (Agostino Ferrente)

中東やアジアからの移民の多いローマのヴィットリオ広場の映画館「チネマ・アポロ」がつぶれた後、その再開運動の中で、その広場にふさわしい移民を中心にしたオーケストラを作ろうと思いついた者たちがいた。メンバー探しから練習、そして市の助成金を得て公演に至るまで2001年から2006年までの6年間カメラを回し続けたドキュメンタリー。手持ちカメラで撮影した素朴な映像ながら、アフリカ、アラブ、インドなどの全く異なる音楽が融合していく過程はすばらしい。

program J
結婚演出家
(2006年/100分) 監督:マルコ・ベロッキオ
Il regista di matrimoni (Marco Bellocchio)

昨年『夜よ、こんにちは』が日本でも劇場公開された、鬼才ベロッキオの最新作。娘が熱心なカトリック教徒と結婚したのをきっかけに創作の危機を迎えた映画監督は、逃げるようにシチリアに行く。そこで出会った奇妙な貴族から、その娘の結婚式をフィルムに撮るよう依頼される。『ポケットの中の握りこぶし』(1965)以来、現代における宗教の問題を追及するベロッキオならではの力作。監督を演じるセルジョ・カステッリットと貴族を演じるサミ・フレーの競演も見もの。

program K
星なき夜に
(2006年/104分) 監督:ジャンニ・アメリオ
La stella che non c'e (Gianni Amelio)

『家の鍵』で父子の旅路を見事に描いたジャンニ・アメリオの新作。鉄鋼工場のエンジニアであるヴィンチェンツォは、中国に輸出した部品に重大な欠陥を見つける。言葉も地理も分からないまま機械を探して中国を縦断する彼の目には、文化や生活の違いが次々と飛び込んで来る。無謀だがひたむきでどこか憎めない主人公を、セルジョ・カステッリットが好演。名撮影監督ルカ・ビガッツィが丹念にとらえた現代中国の姿にも注目。06年ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品。

program L
プリモ・レーヴィの道
(2006年/92分) 監督:ダヴィデ・フェラーリオ
La strada di Levi (Davide Ferrario)

ナチスのユダヤ人収容所から奇跡的に生還した作家プリモ・レーヴィが通った道を再びたどりながら、ヨーロッパを縦断するドキュメンタリー。監督自らがカメラを持って撮影し、自らも時おり画面に登場する静かでプライベートな映像だが、レーヴィへの強い思いと同時に現代ヨーロッパに対する疑問が湧き上がってくる。昨年劇場公開された軽快な秀作『トリノ、24時からの恋人たち』のフェラーリオ監督のもうひとつの顔を見ることができる。

プレミア上映

program X
空のように赤く(仮題)
(2004年/95分) 監督:クリスティアーノ・ボルトーネ
Rosso come il cielo (Cristiano Bortone)

イタリア映画界で活躍する盲目の音響技師、ミルコ・メンカッチの子供時代を描いた実話に基づく感動作。不慮の事故で視力を失ってからの彼の人生を決定づけた「音」との出会いや映画への愛が、ジェノヴァの全寮制盲学校での生活や淡い初恋を交え、みずみずしく描かれる。昨年のサンパウロ国際映画祭で観客賞に輝いた。監督は本作が長編2作目のクリスティアーノ・ボルトーネ。今秋、劇場公開予定。

program Y
それでも生きる子供たちへ
【上映日】
5月1日(火)18:35
それでも生きる子供たちへ
(2005年/130分) オムニバス作品
All the invisible children (omnibus, Stefano Veneruso etc.)

イタリア人監督ステファノ・ヴィネルッソらの呼びかけで、エミール・クストリッツァ、ジョン・ウー、スパイク・リーなど世界の名匠7組が「子供」をテーマに作り上げた短編オムニバス。絶望的に思える状況のなかでも希望を見出し、大人が忘れかけた大事なものを持って、ひたむきにたくましく生きる7つの国の子供たちがあたたかいまなざしで描かれている。プロジェクトにはユニセフ、WFP国連世界食糧計画も協力。2007年初夏、シネマライズ他全国ロードショー。

program Z
マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶
(2006年/102分) 監督:マリオ・カナーレ、アンナローザ・モッリ
Marcello, una vita dolce (Mario Canale, Annarosa Morri)

過去の映像と新しいインタビューを混ぜながら、今日に至るまで世界中の人に愛されてやまないマストロヤンニの限りない魅力に迫るドキュメンタリー。フェリーニが、ヴィスコンティが、フェッレーリが、ソフィア・ローレンが、アヌーク・エーメが、そして娘のキアラたちが語るマストロヤンニ像の数々。彼が電話魔で撮影の最中に電話ばかりしていたなどエピソードも満載だ。イタリア映画が偉大だった時代を追体験できる貴重なフィルム。ナレーションはセルジョ・カステッリット。2007年初夏、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー。

サイレント映画

program S
カビリア [染色(一部彩色)版]
(1914年/3308メートル、16コマ/分=181分)
監督:ジョヴァンニ・パストローネ Cabiria (Giovanni Pastrone)

昨年、監督のマーチン・スコセッシが音頭を取って、トリノ映画博物館が復元したイタリア無声映画史の金字塔と言われる作品。紀元前3世紀のローマとカルタゴの戦争を描いた壮大な歴史叙事詩で、当時世界中でヒットし、アメリカのグリフィスなどに大きな影響を与えた。今回の復元にはマドリッド、モスクワ、ニューヨーク(MoMA)、ブダペストなどの各国のフィルム・アーカイヴが協力し、ボローニャで現像した。昨年カンヌ国際映画祭でプレミア上映。ステファノ・マッカーニョ(2001年の「イタリア映画大回顧」で来日)のピアノ演奏つき。冒頭にスコセッシの1分半の解説あり。

短編作品

a癒しがたき愛 (2005年/16分) 監督:ジョヴァンニ・コヴィニ
   Un inguaribile amore (Giovanni Covini)
bザカリア (2005年/15分) 監督:ジャンルーカ&マッシミリアーノ・デ・セリオ
   Zakaria (Gianluca & Massimiliano De Serio)
c見えますか? (2006年/13分22秒) 監督:アレッサンドロ・デ・クリストファロ
   Do you see me? (Alessandro De Cristofaro)
dニュース (2006年/4分) 監督:ウルスラ・フェラーラ
   News (Ursula Ferrara)
e私です (2006年/21分) 監督:セルジョ・カステッリット
   Sono io (Sergio Castellitto)
※上映作品はイタリア側の都合により、変更の可能性があります。
※上映作品はこの映画祭のために輸入するプリントのため、英語字幕などが入っている可能性があります。