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ニッポン人脈記

「カミカゼ少女」パリ魅了

2006年08月29日

 この夏、日本の10代少女のカリスマモデルは、パリで開かれた東京のファッションを紹介するショーでも人気だった。

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土屋アンナさん。7月にパリで開かれた「東京スタイル・コレクション」に出演した=大原広和氏撮影

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村上隆さん

 土屋(つちや)アンナ(22)。98年に雑誌「セブンティーン」でデビューし、ロック歌手でもある。2年前に公開されて数々の賞を獲得した映画「下妻物語」では、心優しい暴走ヤンキー娘を演じた。アニメや音楽、映画などと混ざって生まれる今の東京ファッションの象徴だ。映画はフランスで「カミカゼ・ガールズ」の名で公開、土屋は知られていた。

 土屋はショーで、セクシーなミニスカートに白いブーツ、ヒョウ柄のジャケットなどを自在にミックスしたスタイルで登場した。東京・渋谷のハチ公前交差点奥にあるファッションビルの名にちなんだ「渋谷109(いちまるきゅう)系」のいでたち。売り場で聞いた客の要望を即座に採り入れて短期間でつくられる「脱デザイナー」の服だ。「私は100%日本人で、かっこいい。そういうプライドでやった」

 会場に集まった約5000人の若者は、日本のアニメや漫画に親しんできた世代だ。あちこちから、こんなため息が聞こえた。「日本の服は、やっぱりすごい」

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 このショーを仕掛けたのは、大浜史太郎(おおはま・ふみたろう)(35)。一日の利用者が350万人という日本最大級の女性向けファッション通販サイト「ガールズウォーカードットコム」などを運営するゼイヴェル(東京)の社長だ。

 大浜は元放送作家で、若い女性対象の番組を手がけていた。学生時代にゴルフ大会を企画するなど、集客ビジネスにも関心があった。女性が最も使う携帯電話に注目し、昨年からサイトとショーを連動させた「東京ガールズコレクション(TGC)」を開く。

 関係者と記者だけを招くこれまでのファッションショーと違って、TGCは一般客が参加できる。気に入れば、携帯電話でその場から注文できる。今年3月のショーには1万8000人が集まった。

 109系は10代の少女たちの日常から生まれる。「東京の街頭から出てくるノンフィクションのファッションが、世界で必ず大きな流れになる」。大浜は確信する。

    ◇

 世界最高峰のファッションショー、パリ・コレクションで意欲的な作品を発表し続けるデザイナーの永澤陽一(ながさわ・よういち)(48)は、109系のパリでの反響に注目する。「デザインや細部の完成度は、まだ問題外。だが、どこかに時代の大きな波を暗示するパワーを感じる」

 永澤は、「一部のトップファッションの変化だけでは、世の中は変わらない」との考え方から無印良品の衣料品やスポーツ用品メーカー、最近は量販店系ブランドのデザインも手がけてきた。それだけに、109系がパリで脚光を浴びたことに、ファッションの潮目の変化を感じたようだ。

 漫画やアニメ風の作品を発表する画家、村上隆(むらかみ・たかし)(44)も、TGCに注目する一人。今年3月、主宰する美術展「ゲイサイ」をTGCとほぼ同じ時期に開催し、サイトでエールを送り合った。

 今年の米サザビーズの競売で、村上の作品が1億3000万円で落札された。3年前には、村上がデザイン協力したルイ・ヴィトンのバッグが世界中で売れた。市場が求めているものを見極めて手にした成功が、村上の次の創作を支える。

 村上は、芸術とファッションの境界はない、と考えている。109系が世界ビジネスとして成功するには、市場のニーズに合った商品をタイミングよく出す戦略が必要なのだ。「うまくやらないと、ブームで終わるかもしれない」と言う村上は、TGCと連携を深め、側面支援するつもりだ。

 約15兆円。世界最大のファッション消費国の日本の衣料品市場は、外国ブランドが席巻し、貿易で言えば大幅な入超状態だ。パリのファッションが「パリ・モード」と呼ばれて世界中に広がっているように、東京のファッションが輸出に打って出て、「Tokyo・モード」と呼ばれる日は来るのだろうか。

 (このシリーズは上間常正、西岡一正が担当します。本文は敬称略)

「ニッポン人脈記」は、月曜日から金曜日の朝日新聞夕刊(夕刊のない地域では火曜日から土曜日までの朝刊)に連載。このページでは各シリーズごとに1回目を掲載します。 ≫朝日新聞購読のご案内

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