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09月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 「20代も、40代半ばの今も何も変わらない。映画好きの青年が映画好きのおっさんになっただけですね」と笑う白石さん。人生のターニングポイントとなったのは2013年に公開された監督作『凶悪』のヒットだった。実際の犯罪を題材にその実像をリアルに描いたこの作品は数々の映画賞を受賞し、白石さんは映画監督として一気に注目の存在となる。

 以後、『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』『孤狼の血』など次々に話題作を世に送り出す。年を重ねるほどに勢いは増し、昨年は3本、今年も本日公開の『凪待ち』のほか2本という多忙ぶりだ。

 「撮れば撮るほどやりたかったことがこぼれ落ちていき、新たなアイデアがたまっていく。それが次の作品の創作意欲につながっているように思います。それともう一つ、監督デビューが34歳と遅く、20代で映画を撮れなかったことへの悔いみたいなものが自分の中にあるんです。青春を取り戻したくて、数多くの作品を撮ろうとしているのかも知れませんね」

 特に最近は早くに才能を開花させ、面白い作品を撮る20代の監督が増えており、彼らに触発されている部分もある。「監督になりたいという野心が20代の僕にはなかったから仕方ないのですが、彼らの映画を観(み)ると、ああもう自分には撮れない映画だなって感じます。だから余計に今頑張ろうとしてしまう(笑)」

 時代劇を始め、まだチャレンジしていないジャンルも多い。それらに一つひとつ挑戦していくつもりだが、どのジャンルにおいても「人間って何だ?」ということを突き詰める表現だけは貫きたいと考えている。「僕は不完全な人ほど愛(いと)おしい。今作の『凪待ち』でも、愚かにしか生きられない人間を切々と描いたつもりです」

 バイオレンスが炸裂(さくれつ)する作風から怖い人と思われがちだが、白石さん自身は超がつくほどの常識人。現場で人を怒鳴ったり大声を上げたりすることはない。「例えば『働き方改革』を法律が決まるずっと前から実践し、できる限り遅くまでは撮影しないようにしています」

 そこで役立っているのが若い頃から意識して鍛えてきた直感力だ。「選択に際しては、根拠がなくても絶対にこっちだと自分で決めることを意識してやってきました。結果を踏まえ、毎回自分の中で反省会もしています」。そのかいあって今、監督として現場でとっさに判断しなければいけないことにも素早く対応し、ほとんどミスだと思うことはないという。

 毎回、この一本で人生終わってもいいと思って撮影に臨んでいると話す白石さん。その覚悟が、新たな傑作を生み出していく。

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