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09月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 「ヒロシです。」から始まる哀愁に満ちた自虐ネタで一世を風靡(ふうび)した、芸人のヒロシさん。知名度も収入も格段に上がったのはうれしかったけれど、同時に予期せぬつらいことも増えていった。あくまでネタで勝負する芸人になりたかったのに、バラエティー番組などで求められるのは面白いことを素早く返すトーク力。自身が最も苦手とするものだった。


 「僕は一つのネタでも1カ月ほどかけて作り、ライブでお客さんの反応を見て更にブラッシュアップして完成させます。芸人としてそういうことがやりたかったのに、テレビではネタのクオリティー以上に瞬発力のあるリアクションが求められ、評価される。最初は自分なりに頑張ったのですが、どんどんつらくなり、精神状態もむしばまれていったんです。それで当時所属していた事務所に『もうテレビには出たくない』と伝えました」


 テレビでの露出を減らしたことでおのずと仕事は激減。それによって途端に落ち目扱いされ、「一発屋」のレッテルを貼られたりした。


 「それでも自分に合わない世界から離れられて良かった、気持ちが随分ラクになりましたから。それに、テレビの世界から『逃げる』わけですから、仕事を失い収入がなくなるというリスクも覚悟していましたし。ただ、一発屋と言われるのは本当に嫌だったので、絶対に他の手段で稼いでやろうと思っていました」


 そんなヒロシさんの、現在の大きな収入源になっているのがユーチューブだ。「もともとアウトドアが好きで、時間ができたのもあり、ほんの遊びのつもりでチャンネルを開設し、『ソロキャンプ』の様子を配信したら意外に好評を得ました。お陰である程度の利益を出せるまでになっています」。これ以外にもカフェの経営やタレント業など多彩な分野で活躍。最近はキャンプの達人として、イベントのゲストや講演などへの出演依頼も増えている。


 「様々な経験をしてきて思うのは、やりたくないことは続かないし、何よりやりたくないことに自分の人生を売る必要はないということ。嫌なことから逃げても何とかなります。僕は、一番の報酬は気持ち良く仕事ができることだと思う。だから自分の好きなことを色々やってみて、その中で心底楽しいと思えることを生業(なりわい)にする。あわよくばこれがお金になればいいと、そんなスタンスでいいんです」


 ヒロシさんは本の執筆でもその才能を発揮している。紆余(うよ)曲折を経てたどり着いた考え方が詰まった著書『働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける』が好評だ。今、その生き方が多くの共感を呼んでいる。

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