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09月22日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 柔道選手として活躍していた松本さんが、今年2月に現役引退を発表。ここで世間を驚かせたのが、「第二の人生なんですが、アイスクリームを作ります」という発言だった。


 「所属する(株)ベネシードの会長から『次に何がしたい?』と色々な提案を受け、その中にアイスクリーム事業があったんです。アイスは元々大好きでしたが、選手時代は減量もあってなかなか堂々と食べられなかった。だからこそ体に良くて罪悪感なく食べられる、おいしいアイスが作りたいなと」


 松本さんが柔道を始めたのは5歳の時。兄や姉が通っていた柔道塾に入ることになった。「やりたくないと駄々をこねたのですが、お菓子をあげるからという母の言葉に釣られてしまって(笑)」。ただ非常に厳しい道場で、中学まではずっとやめたいと思っていたそうだ。


 そんな気持ちとは裏腹に、中学時代に実績を上げた松本さんは、周囲の勧めもあって拠点を地元の金沢から東京へ移し、高校へ通いながら実業団で練習することになる。ところがここでの練習環境が自身には合わなかった。


 「周りはオリンピックを目指す選手ばかり。目的意識と技術レベルにあまりにも差がありすぎてついていけませんでした。次第に練習に行かなくなり、結局、高校も辞めて金沢へ戻りました」。しかし、この挫折と悔しさが松本さんの闘争心のスイッチを入れた。


 自分を鍛え直すには、有能な選手を多く輩出している帝京大学が良いと考えて進学。2年生で日本一になり、3年生で北京オリンピックの補欠選手に選ばれる。その頃から世界というものを意識し始めたという。松本さんが当時から他の選手と違っていたのは、柔道が好きだからというよりも、「とにかく勝つ」という執念で試合に臨んでいたことだ。


 「柔道は『心技体』のスポーツ。これがそろっている天才は圧倒的に強い。でも私は残念ながら『技』が足りていなかった。これは天性のもので、どんなに練習しても得られないんです」。それでも凡人の自分が天才たちに勝ち、世界の頂点に立つにはどうすればいいのか。考えた末に気づいたのは自分の特性だった。


 「私はどうも空気を読みすぎるところがある。でもそこを逆に生かし、最初に相手をにらんで威嚇したり、不敵な笑みで強く見せかけたりしながら、相手の反応や力の入れ方、感情などを読み取るんです。その上で、相手をこちらのペースに巻き込んで勝ちに持っていく。この戦術がいわゆる野獣スタイル」。ロンドンオリンピックで金メダルを獲得できたのは、こうして自分の戦い方を見つけたからだった。

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