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08月14日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 平成の終盤、落語界に巻き起こった二ツ目ブーム。その立役者となったのが「成金」だ。落語芸術協会所属の二ツ目の落語家と講談師11人で2013年に結成されたユニットで、中でも最も勢いのある若手落語家として注目されたのが小痴楽さんだった。


 「前座の時に毎日一緒だった神田伯山(前名・神田松之丞)や桂伸衛門(前名・桂伸三)が声をかけてくれて、僕も参加しました。毎週金曜の夜に新宿で落語会を開き、楽屋では上下の関係なく意見をぶつけ合っていた。お客さんも最初は少なかったのですが、どんどん増えていき、そのうち『成金』の名を冠して地方公演ができるまでになりました」


 小痴楽さん自身、「成金」を通じてかなり落語家として成長できたという実感があると語る。「ただ仲が良いというのではなく、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しようという会だったのが刺激的でした。それぞれの高座の良いところは盗ませてもらい、マクラ(冒頭の小話)の作り方や笑いの取り方を垣間見ながら、自分らしい落語のやり方を考え、見いだすことができました」


 そして昨年9月、小痴楽さんは真打ちに昇進する。実はこれを機に父・痴楽の名跡を継いだらどうかという話もあった。しかし小痴楽さんは時期尚早と辞退した。「落語ファンじゃない人にも『ああ柳亭小痴楽なら知ってるよ』と言われるほど、もっと知名度を上げてからでないと。二世だからこそ、なお一層修業を積んで実力をつけてからにしたいんです」


 そんな小痴楽さんが目指しているのは「いい加減な落語家」だ。「いわゆる名人と呼ばれる落語家さんは、出演者名を書いた『めくり』に名前が出ただけでどよめきが起きる。僕は『小痴楽』と出たら、『あ、来てたんだ』ぐらいの感覚で迎えてもらえればいい。でも『あいつ今日、何やるんだろうなあ』ってお客さんがニヤニヤしてくれる。そんな風に肩の力を抜いて楽しんでもらえる落語家になりたいです」


 昨年11月に出版した自身の初エッセー集『まくらばな』には、亡き父や家族、友だちとの思い出、そしてお世話になった師匠や仲間とのエピソードが面白おかしくつづられている。そこからは、情に厚くて、どんな人とも真っすぐな気持ちでつき合う小痴楽さんの素顔が伝わってくる。


 仕事にはいつも「ありがたい」という気持ちで向き合うという。「やらせて頂いているという思いと、どうせやるんだったらどんな仕事も楽しもうという心持ちで取り組んでいます」。若いのに昔気質な所もある。硬軟両面を併せ持ち、それが落語の中で程良く生きている。

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