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07月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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観客に、納得の演技を見せよう


  大阪の母校・登美丘高校のダンス部で踊り続け、その後は大学で舞踊学を学びながら母校での振り付けを担当し、今も共に作品を作っています。日本高校ダンス部選手権では2連覇を果たしましたが、この大会は2008年から始まったストリートダンスの競技会で、高校生たちの本気がぶつかり合います。この場で後輩たちを勝たせてあげたい。それは私の大きな目標の一つです。

 でも、初優勝を手にする前まで、私は自分の指導方法がずれていることに気づきませんでした。私は厳しい練習をさせますが、本番前には生徒たちに「自分が楽しかったりうれしかったりする気持ちが、見る人には絶対に伝わるよ。今まで頑張ってきた毎日をしっかり思い浮かべて踊ろう」と言っていました。その上、緊張を和らげるつもりで「つまずいてもいいから続けるのよ」というような意味のことさえ言いました。しかし、そうすると本番では練習の成果を出し切れなかったのです。悔し泣きする生徒たちを見てようやく、気持ちや感情で踊ると微妙にバラバラになりがちだと思い知りました。

 完璧なパフォーマンスができなかった生徒は、一生悔やみます。この経験をしてから、私は「本番を意識した練習をやり込んでやり込んで自信をつけよう、その練習は決して自分を裏切らないから」と、伝え方を変えました。練習最終日の最後まで集中を切らさなければ、本番での少しくらいのミスはカバーできると話すようになったのです。どんな人でも本番は怖い。でも、生徒たちのハートは本当に強くなりました。前回の大会では誰かが小物の傘を落としたようなのですが、彼女たちは集中力を途切れさせずカバーし、踊り続けました。何と、その場で見ていた私さえその瞬間に気づかなかったほどです。

 まだ10代の、学校のクラブ活動で舞台に立つ女子生徒たちです。それでも彼女たちは、お客さんを感動させる完璧な演技をチームで成し遂げようとします。たかが高校生の部活などとは言って欲しくない。その姿勢は、プロフェッショナルに迫るものだと私は思います。

 

生徒の本気は大人を動かす


  私が高校時代、同好会から部に昇格したダンス部は部員9人でのスタートでしたが、あの頃から10年近くを経て今は100人を超えています。私もプロの振付師として他の仕事を持っていますから、生徒たちには私の振り付け映像を見て覚えてもらうことが多いのですが、とにかく習得が早い。そしてパフォーマンス力も高い。先輩たちからの本気のバトンがつながっているようです。

 今年は、世界大会に向けた日本予選が4月下旬にあって、登美丘高校ダンス部は優勝を成し遂げ7月の大会に日本代表として参加が決定。開催地のロサンゼルスへ55人が飛び立ちます。しかし、公立の高校ですから学校から渡航費用や宿泊費は出ない。でも、生徒の保護者を始め同窓会や街の方々が資金集めに動き、決して少なくはない費用を熱心に集めてくださっています。大人たちが地域ぐるみで応援してくれるのは、生徒たちの本気の挑戦が心に響いたから。そしてそれは私にも、一緒に世界に挑む機会を与えてくれました。(談)

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