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08月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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迷ったら調べ尽くし、分析する


 新卒で出版社に入社し、配属先は少女漫画を担当する編集部、そしてすぐに編集者としての仕事が待っていました。素人同然の私が担当となった漫画家さんは、編集部から見放されたのかと落胆しきりでした。当たり前です。プロ作家である以上、目標は掲載される作品の中で人気1位になることであり、それを共に実現するのが担当編集者だからです。


 何とか一人前になりたい私は、まず現状認識から始めました。担当の漫画雑誌『Cheese!』を創刊号から読み、自分が読者となってアンケートを書いてみる。それを実際に届いたアンケートと比べたのですが、私の感じ方とは全く違いました。地道に続けなくては理解できないのかと思いつつ、ふと、人気上位作品の順位変動に気づきました。ある時期から急に落ちていく作品がある。この原因をピンポイントで追えば何か分かるのではないかと思い、仮説を立てていきました。


 そして1カ月後に得た私なりの結論は幾つもあったのですが、その一つは、主人公が自分から積極的に行動するほど作品の人気が高いということでした。失敗しても果敢に挑戦する主人公は応援され、逆に色々な事件が降り掛かってくる設定の中で「どうしたらいいんだろう」と落ち込み受け身になると、順位は急降下していく。私の担当雑誌には、行動しない主人公を嫌う読者がたくさんついていました。その期待に応えるか、逆手をとって活(い)かす方法はないか……


 こんなふうに、まず現状を調べ、自分なりの仮説を立ててみる。そして進むための物差しを持ち、試していくというのが私の方法論です。それは自分で決めたものだから人のせいにはできないし、結果が出なくても原因が分かります。やがて私は、雑誌内の人気順位をおおよそ予測できるようになり、担当作家さんへの提案ポイントもつかめるようになっていきました。


成功ではなく、失敗に目を向ける


 色々と考察する中で、ヒットを出す方法論は無限に考えられると思いました。だからむしろ失敗する方法や避けるべき方法を探そうと、ヒットを出していない先輩の打ち合わせに聞き耳を立て始めました。実はそういう先輩たちほど、本当に勤勉で熱心でした。長い時間をかけ、作家さんに直すべき部分を事細かにアドバイスしている。でも、担当作品をヒットに導けない。


 その様子を見て私は、編集者の能力には3段階あると考えました。第1段階は、売れるか売れないかを見極められる。第2段階は、直すべき箇所を特定できる。第3段階は、どうやって直したらいいか具体的なアドバイスができる。


 第1段階でつまずいている人が、第2段階となる修正箇所の指摘をしても、それは間違っているので逆に直したことでつまらなくなるということが起こってしまう。


 後輩のくせにと怒られるのを覚悟して、ある先輩にその考えを伝えたところ、「お前、本当に嫌なやつだけど、なるほどな」と言ってくださった。同僚はライバルではなくノウハウを分かち合う仲間。これは会社という集団で働く楽しさだと思いますね。(談)

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