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10月22日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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新しい働き方も視野に入れる

 

 一日100食を売り切ったら営業を終え、夕方には従業員が全員帰宅。年齢や性別を問わず、多様な条件の人々が無理なく働けるように。その考え方でステーキ丼専門店から始め、2店目はすき焼き専門店、3店目は肉寿司(ずし)専門店と京都市内に同じ方針の店を出していきました。


 しかし、順調な営業が続いていた2018年に、一日50食しか売れない危機がやってきました。6月に起きた大阪北部地震、7月に西日本一帯を襲った豪雨、そして9月には西日本を大型台風21号が縦断。立て続けの自然災害が大きな爪痕を残していきましたが、その復旧が続く間、店は以前100人だった来客数が半分の50人ほどになっていました。この苦しい時期に私が痛感したのは、自然災害はこれからも起きる、それを前提にした新しい取り組みが要るという危惧でした。


 冷静に振り返れば、あの困難な状況でも50人ほどのお客さんは毎日来てくださった。そこで、経営できる最小ラインを「50食」にした仕組みを作ってはどうかと思い至りました。一品メニューとして選んだ料理はキーマカレーです。これなら50人ほどの集客がかなうのではないか。1食千円として売り上げは一日5万円、月25日営業で125万円なら採算は取れる。こうして、新たに展開した店が「佰食屋1/2」です。


 売り上げの上限を決め、どうやって黒字にするかは経費節減の工夫の連続。この店を軌道に乗せ、私はこの営業形態そのものを、例えば若い夫婦が子育てをしながら、無理なく地元で暮らしていける働き方として参考にして頂けたらと夢見ています。多くの共働き家族は、「ワンオペ育児」のように妻一人が仕事も家事も育児も抱え込み、夫は残業続きで子どもの寝顔しか見られないという現状でしょう。そんな苦しさから抜け出して欲しいとも思います。


 いつか、小さくとも自分たちの店を持って身近な方たちに喜んで頂き、転勤や定年の不安も無く働けるという選択肢も選べるようになると考えています。

 

社長には思いを伝えて

 

 日本の多くの働き手は根気強く、従順で誠実だと思います。お給料をもらえるなら、雇い主からの多少の無理難題は受け入れようとしていらっしゃるでしょう。でも私も経営者となって実感したのは、「従業員はどう思っているかを経営者に伝えることは難しい」ということ。それはとても不安で寂しい経験でした。


 今でこそ私の職場では、互いに言葉に出して分かり合うという空気が育ちました。けれど世の多くの管理職や社長は、従業員の本音を知りたくてもかなわないままでしょう。だから、これからは自分たちのつらさや提案を真っすぐに伝えるべきだと思います。匿名の手紙でも、メモでもいい。ささやかな勇気を持って少しずつ意見を届けませんか。気持ちよく働きたいと願う声は経営側に刺さるはずです。


 会社は同じ船に乗ってチームで進んでいくものだと思います。それを、強い立場の人間だけで動かすのは難しい。私にはそう思えてなりません。互いの立場を思いやり、一緒に進む時代にしていきませんか。(談)

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