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内定取れる親 取れない親

AERA:2009年11月9日号

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 第2氷河期ともいうけれど、わが子には内定を取らせたい。親ぐるみ、親がかりの就活はいまや当たり前だ。20、30年前の就活の常識は非常識。子の心親知らず、ってことになっていませんか?(AERA編集部 大波綾)

 その半数は、ニッポン放送のラジオCMに引き寄せられ、首都圏から集まってきた。10月11日の日曜日の昼下がりに都心のホールで開催されていた就活生向けのイベント「スーパー・ビジネス・フォーラム」のひとコマ。「親と子の就職活動」と題した、就活生の親に向けた講演会だ。

 いまの大学生の親は40代半ばから50代が中心。就職協定があって、大学4年生の10月1日が会社訪問解禁日で、短大卒は学校推薦で一般職のめどが立っていた……という親世代の秋の風物詩は、就職情報サイトの「グランドオープン」となって形を変えた。そもそも、就職活動を略して就活と呼ぶようになったのも親世代には無縁の話だ。

 いまどきの就活の内情を知ろうと、約30人の就活生の親が集まった。そのほとんどが母親で、父親は数人。なかには夫婦での参加者もいた。メモを取るさまは、企業のブースを必死に回る当の就活生同様、あるいはそれ以上に真剣だ。

 講演会では、SPI2のテストセンターといった適性検査の種類、グループワーク、グループディスカッションと称される面接の形態などカタカナ語が並ぶ昨今の就活用語の基礎知識、大学3年生になるとインターンシップが始まる早期化の現状など、かなり「高度化」した就活のあれこれを解説すると同時に、就活生とのかかわり方についてのアドバイスがあった。

 ●「最後に決めるのは親」

 「親に情報は入ってこない。インターンシップが始まる前に聞けたらもっとよかったのに」と感想を述べる親もいた。

 講演した「学情」企画部の乾真一朗さんは、「もはや、子どもだけの就活は考えられない」と話す。

 「内定先を絞るとき、『最後の決め手は親』と、親と相談して就職先を決める学生が年々増えている。親に反対されたら内定をけられてしまうと、企業も親を意識して採用活動をしています。就職が難しくなったいまだからこそ、親の力はますます重要になってきているのです」

 大学でも、親ぐるみの就活対策はもはやめずらしくない。

 都内の有名大学のキャリアセンターには、昨年から親からの問い合わせが増えている。

 「一昨年までは年に数件しかなかったのが、昨年からは月に1度はかかってくる。時代は変わったなあと思います」と担当者は苦笑する。

 なかには、入学前に就職を見越して、「ANAに入るためには、何学部がいいのか」と電話をかけてきた親がいて、返答に困ったという。

 跡見学園女子大学(埼玉県新座市、東京都文京区)では、6年前から就職課主催で3年生の保護者に向けた就活セミナーを開いている。年々参加者が増え、1学年約900人のところ、今年は200人近くの保護者が出席した。土曜開催のためか、なかには両親そろっての出席もあった。

 ●「遅刻します」親が電話

 就職に限らない全学的な保護者会のような行事でも、各課のブースのなかで就職課のブースが突出して人気で、行列ができるほど。

 「親御さんにとって、子どもの大学入試後の最大の心配事は就職です。子どもが少ないいまは、親にとっても子どもの就職活動は初めての経験。大学受験と違って正解がなく、親御さんもどう対応していいのか戸惑っているのだと思います。いま就活で何が起きているかを親に発信するのは大学の重要な役割。親と大学が連携して学生を見守っていきたい」と就職部就職課の大森一枝さんは話す。

 と、就活に熱心な親が増える一方、行き過ぎた親も出現しつつあるのが最近のようだ。

 「うちの子どもが行きたい企業セミナーが満席だった。何とかならないか」

 「子どもがセミナーに行く途中、道に迷ったので教えてほしい」

 「うちの息子あてに業界研究の資料が届いているが、志望業種とは違うので送らないでください」

 子どもに頼まれてか、親の勝手な判断なのか、前出の学情には、この3、4年、就活生の親から泣きつかれる電話やクレームが後をたたない。いわゆる「モンスター化」した親たちだ。

 「企業はその学生の親とのかかわり方をみている。企業の面接に遅刻するといった連絡を、親がしてくるケースがすごく多くなっていますが、その時点でマイナス要因になります。親の心配性があだになることが起きています」(乾さん)

 ●親が土下座で内定阻止

 企業をとりまく環境は、親世代のそれとはがらりと変わっている。それに気づいていない親もまた多い。

 「親世代にとっては、『やっぱりメーカーか金融が手堅い』という意識は強い。サービス業に代表されるようにかつて離職率の高かった業種に、親が難色を示すケースもよく見受けられます。子どもがいいも悪いもわかって決心しても、親がやめておけと止める。せっかくの内定を親が台無しにしてしまっては、元も子もありません」

 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の准教授で『就渇時代の歩き方』の著書がある小島貴子さんは、「20年前、ユニクロやニトリの成長を想像できたでしょうか。20年前に優良企業と言われたところがいまでは成長が止まってしまい、風前の灯になっていることもある。企業の社会的価値観が変わっているということを親もしっかり認識してほしい」とくぎを刺す。

 携帯ゲームやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「モバゲータウン」などで成長著しいネット企業のディー・エヌ・エー(DeNA)。南場智子社長は、創業してほどなく募集した中途採用で、悔しい思いをしたという。内定を出した人の親が会社に乗り込んできて、「お願いだから内定を取り消してくれ」と玄関で土下座をしたというのだ。結局、「採用を取り消すまで帰りません」と2時間も受付で粘られ、泣く泣く内定を取り消した。

 当時は社員数が100人に満たず、ITバブル崩壊の時期とも重なった。オークションサイト「ビッダーズ」もまだ黒字化していなかった。親世代には知名度がなかったとはいえ、子どもが企業の成長を見越して、転職を決意したのだ。

 「親に直接言われたら、あきらめるしかなかった」と、南場さんはそのときの気持ちを吐露する。

 ●「正しい就活親」3カ条

 親が子の足をひっぱらないためには、どうしたらいいのか。

 先の小島さんは、

 1、過去の価値観から離れる

 2、脅さない

 3、突き放さない

 の3カ条を挙げる。

 昔の価値観。たとえば「公務員は安泰」とはよく言われたものだが、「絶対につぶれない企業はこのご時世、ありえない。公務員改革が進むなか、公務員とて同様です。親世代の価値観からはずいぶんと変化があります。『公務員になりなさい』などと入り口から無理強いすることは、子どもの内定を遠ざける原因になります」と話す。

 「○○さんは内定が出ているのに、あなたはどうするの?」と脅すのも、「お前の好きにしなさい」と突き放すのも、親の取るべき態度としてはNG。もっとも身近にいる社会人の先輩として、「真剣に相談したい」と思わせることが大切だという。

 「就活では多くの選択と決断と覚悟が必要になるので、子どもがこれまでに比べて大きく成長します。親から巣立っていくのはさみしい気持ちもあるでしょうが、ここは一つ、親も成長するつもりで現代の就活事情を理解してほしい」

 ちなみに、南場社長率いるディー・エヌ・エーは、2007年に東証1部に上場し、現在の従業員数は連結で600人を超えた。新卒のエントリー数は1万人以上で、来年4月入社には59人の新卒が入社する予定だ。

 さすがに、いまや親の意向による辞退はないという。

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