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学部間の「内定率格差」 大学生13万人が就職できない!

AERA:2010年2月22日号

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イラスト      ※イラストをクリックすると拡大します

 大学4年生の就活が終わらない。なかでも文学部の落ち込みは激しい。苦戦している就活生の頭に、ふとよぎることがある。入ったらヤバイと称される企業に入るべきか、就職浪人か−−。(AERA編集部 大波綾)

 学生数の多い都内の大学で3・4年生を対象とした授業を持つ非常勤講師は、今期、“異変”を肌で感じた。授業に出席している学生の数が、一向に減らなかったのだ。

 400人は入る大教室で、例年ならば就活が始まるとポツポツと空席が目立ってくるのだが、今期は授業が始まってから一貫してびっしりと席が埋まっていた。出席率もリポート提出率も97%。とにかくまじめなのだという。リクルートスーツの学生もいるが、秋から就活を始めた3年生か、いまも内定が出ない4年生か、わからない。「ここまでがんばってきたのにはしごを外されたという思い、就職難への怒りが伝わってきますね。いまの学生を見ていると、さすがにかわいそうな気持ちになります」と、この非常勤講師は話す。

 厚生労働省と文部科学省の1月の発表によると、2010年3月に卒業する予定の大学生の就職内定率は12月1日現在で73.1%。調査が始まった1996年以降、最低だった。

 就職情報サービス「ディスコ」が文部科学省の学校基本調査などからまとめた推計によれば、10年卒は進学も就職もできずに卒業する大学生が6年ぶりに10万人を超える見通しだ。同社によれば、フリーターも過去最多の3万人程度にのぼり、就職できない大学生が前年比6割増の約13万人に達する。大学卒業予定者の4人に1人は就職できない計算だ。

 ここにきて、10年卒の内定状況は就職氷河期と同じ、あるいはそれ以上に悲惨という予測が出てきている。

 ●35ポイント減の文学部

 教育関連情報を提供している「大学通信」情報調査・編集部の安田賢治さんも、今年、“異変”を感じ取っている一人だ。「東大3年生の動きが早いんです。例年ならば、10月になって3年生の就活が始まっても東大生はゆったり構えていますが、今年は逆。早めに手堅い大手から内定がほしいと、精力的に活動していて、焦っているようにさえ感じます。東大を出たのに内定が出ないなんてプライドが許さないんでしょう」

 何がそうさせるのか。やはり現4年生の就職内定率を突きつけられているからだろう。

 大学通信が全国の大学約600校に調査をしたところ、昨年11月末時点で回答があった244校で、卒業見込み者数から大学院進学予定者数を引いたうちの就職内定率は50.6%だった。中間発表とはいえ、前年の就職率からは30.2ポイントも下回った。

 10年卒予定者の内定率と09年卒の就職率との比較を学部系統別で見ると、国家試験の結果が出る前でも「看護」がもっとも高い。次いで「生命」「水産・海洋」が続くのは、不況に強いとされ、人気も高い食品業界との兼ね合いではないかと、大学通信の安田さんは見る。

 反対に、卒業見込み者数が多い学部系統のうち、「文・人文」が34.9ポイント減、「教育」が同34.5ポイント減と内定率の低さが目立つ。「中間発表なので最終的な就職率と乖離がある点は差し引かなければなりませんが、それでもかなり悪い。景気がいいときは学部間の格差は目立たないのに、不況になると文・人文系の内定率が途端に悪くなり、全体を下げてしまう。文・人文系は景気のバロメーターと言えますね」(安田さん)

 ●「大学間格差」も広がる

 一方、不況にあっても内定率が高い大学の多くが単科大学だった。

 とりわけ1位の豊田工業大(名古屋市)はトヨタ自動車が設立した理工系の単科大学で、大学のホームページでも「就職率100%はもちろんのこと、ほとんど全員が『有名企業』へ」とうたっている。学部と修士課程を合わせて70人に満たない少人数の学生をマンツーマンで進路指導するだけあって、就職率100%が当たり前となっているのだ。

 そのほかも、2位の富山県立大は工学部、3位の東京医療保健大は看護、医療栄養、医療情報の学科のみと、就職にすぐ結びつきやすい学部構成になっている。

 10年卒は前年より採用を減らしている企業が多く、「厳選採用」だ。同じ学部系統とはいえ、厳選採用の対象になる上位校と、そうではない大学との格差も広がっているようだ。

 大学の就職課やキャリアセンターも必死の様子で、安田さんによれば、中堅から下位の大学では、卒業生や企業の人事を集めて「とにかく採用してくれ」と頼み込んでいるという。

 「大学の多くは就職率が悪いと学生集めにすぐ影響します。就職率を上げるためにはなりふり構っていられないといったところでしょう」

 とはいえ、上位校といっても安泰とは言えなさそうだ。

 同じ大学でも内定をとれる学生とそうではない学生の二極化が進んでいると言われて久しいが、10年卒はそれに加え、事務職希望の女子学生に内定が出ていないケースが多いという。

 最終的な数字は3月31日以降にならないと出ないが、「10年卒は女子大の就職率が厳しく出そうです。MARCHクラスでも、女子の比率の違いによって就職率に差が出るかもしれません」(安田さん)

 女子の例でわかりやすいのが、大学通信の調査で、総合大学でも内定率が8位と上位に入った名古屋大だ。

 ●「文学部」苦戦する理由

 工学部や法学部の内定率は前年の就職率よりもすでに上回っているが、名大以外でも落ち込みが激しかった経済学部が前年比で18.9ポイント減、文学部が17.4ポイント減、理学部が14.5ポイント減と落ち込みが激しい。

 安田さんはこう解説する。「名大だけでなく、経済学部は全体として前年より低調。文学部は女子学生が多いために率は悪く出ています。理学部は理系のなかでは女子の比率が高い。基礎研究を担うために、企業に余裕がなければ就職は厳しくなるようです」

 実際、企業は学部によって学生に差をつけているのか。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の准教授で『就渇時代の歩き方』の著書がある小島貴子さんは「企業は学生を学部では見ていない」と断言する。「たとえば文学部。不況になるとすぐ就職率が悪い例として取り上げられますが、なぜ就職率が悪くなるかと言えば、文学部の女子の比率が高いからです」

 学部での選別というよりも、男女間の差が就職率に反映されるという。一方でこうも話す。「文学部はムードとしてガツガツ就活をするタイプの学生が少ない。そのことも就職率に影響が出てしまう要因です」

 小島さんは毎年のように学生にエントリーシートのアドバイスをしているが、自己PRや学生時代に打ち込んできたことといった項目で文学部の学生のレベルは高いほうだと言う。「エントリーシートの出来不出来は、圧倒的に読書量の差に比例すると考えています。その点、文学部の学生には読解力、想像力がすぐれていて、相手に読ませる文章を書ける学生も多い。たまたま就活に消極的なタイプが文学部に集まっているのかもしれませんが、文学部であることが企業にとってマイナスに働くことはありません」

 ●飛び交うブラック情報

 そんな小島さんでさえ、今年は「いままで見てきたなかで一番きつい。氷河期以上」と感じているという。

 先のディスコの調査によれば、10年卒の大学生のうち約13万人が就職できないことになる。「13万人のなかには、楽観しすぎていた人、あるいは去年内定をもらった先輩と同じくらい活動していればなんとかなると思っていた人が多く含まれているはずです。その見通しは甘かった。厳しい言い方をすれば、底上げした自分は通用しないということなんです」

 こうした就職難の最中、インターネットの掲示板では、内定が出た人もそうではない人も、情報収集に躍起になっている。

 Q&A型のサイトの就活関連にある定番の質問はこうだ。「内定をもらった企業がブラック企業みたいなんですが、入社しないほうがいいでしょうか」

 さまざまな会社がネット上で「ブラック認定」をされているが、労働環境が劣悪、低賃金、休みがない、社長がワンマン、大量採用で早期離職率が高い、毎年のように自殺者がいる……と、定義はいろいろ。

 ●イヤな仕事把握すべき

 ネット上では、激しい取り立てで問題を起こして倒産した事業者向けのローン会社、社長が業務上横領で逮捕されて経営破綻した教育産業の会社などの名前が真っ先に挙がっている。現存する企業でも金融、飲食や量販店といった接客系は目立つ。なかには一部上場企業、就職人気ランキングで上位にある企業の名前もちらほら出てくる。営業ノルマがきついことで「ブラック認定」をされているケースもあった。

 内定が出ても、そうした情報で不安に陥っている学生は少なくない。

 小島さんの定義は、(1)誰に対して(2)何を(3)どんな方法で(4)利益を出しているか、この4点が公明正大にわからない会社=ブラック企業だという。 「学生が実社会につながっていないゆえの不安です。あなたの給料がどういう出どころによって、どういう仕組みによってもたらされるのかを知る必要がある。その企業に行く行かないの前に、自分がイヤな仕事は何なのかをはっきりさせることが大事です。本来ならば、入社試験を受ける前に把握しているべきことなのですが」

 内定が出ない4年生と、これから内定を取りにいこうという3年生。もつれた就職戦線に、好材料が見えそうにない。

 ■学部別就職率ランキング

 学部系統   就職率昨年比  10年内定率 09年就職率

 看護      ↓12.4    80.3   92.6

 生命      ↓19.2    63.9   83.2

 水産・海洋   ↓19.5    54.8   74.4

 政治・政策   ↓24.0    61.0   85.0

 心理      ↓21.2    52.6   73.8

 観光      ↓24.5    57.8   82.3

 理・工     ↓25.9    62.4   88.3

 国際      ↓26.6    52.9   79.5

 商       ↓27.8    52.4   80.2

 農       ↓28.5    57.3   85.8

 経営      ↓28.7    51.7   80.4

 情報・メディア ↓29.2    52.5   81.6

 法       ↓29.4    45.5   74.9

 経済      ↓29.6    50.8   80.4

 芸術      ↓29.8    21.7   51.5

 家政・栄養   ↓30.7    55.4   86.1

 外国語     ↓31.8    46.9   78.7

 社会      ↓32.1    50.5   82.6

 教育      ↓34.5    49.6   84.1

 文・人文    ↓34.9    40.7   75.6

 社会福祉    ↓35.0    49.4   84.4

 教養      ↓35.7    44.7   80.4

 医療技術    ↓36.6    52.8   89.4

 人間・人間科  ↓38.7    42.0   80.7

 体育・スポーツ ↓42.2    35.2   77.4

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 全体     ↓30.2     50.6   80.8

 (大学通信調べ。全国623校のうち2009年11月末時点で回答のあった244校の学部系統別で、09年の就職率と10年の内定率を比較し、差が少ないほうから並べた。医学部、薬学部、分類が難しい学部など一部は抜いた)

 ■2010年内定率大学ベスト10

順位 設置 大学名[所在地]    10年内定率 09年就職率   昨年比

 1  私 豊田工業大[愛知]    100.0  100.0   0.0

 2  公 富山県立大[富山]     95.0   97.6 ↓ 2.6

 3  私 東京医療保健大[東京]   90.4   92.2 ↓ 1.8

 4  国 九州工業大[福岡]     82.6   95.8 ↓13.2

 5  公 島根県立大[島根]     81.7   94.5 ↓12.9

 6  私 聖隷クリストファー大[静岡]81.1   92.4 ↓11.3

 7  公 秋田県立大[秋田]     81.1   95.9 ↓14.8

 8  国 名古屋大[愛知]      81.0   90.0 ↓ 9.0

 9  公 名古屋市立大[愛知]    80.4   88.5 ↓ 8.2

10  私 日本文化大[東京]     79.2   87.8 ↓ 8.5

 (2010年の内定率の上位10校〈09年11月末現在〉。設置の私は私立、公は公立、国は国立を示す)

 ■名古屋大の学部別データ

 学部名  10年内定率 09年就職率   昨年比

 文学部    75.2   92.6 ↓17.4

 教育学部   87.5   89.3 ↓ 1.8

 法学部    92.0   86.7 ↑ 5.4

 経済学部   68.8   87.6 ↓18.9

 情報文化学部 86.2   94.0 ↓ 7.8

 理学部    65.2   79.7 ↓14.5

 医学部    85.7      −     −

 医学部医学科    −    0.0     −

 医学部保健学科   −   96.5     −

 工学部    91.9   84.5 ↑ 7.4

 農学部    88.2   96.0 ↓ 7.8

 (名古屋大の学部別で09年の就職率と10年の内定率を比較。順不同。医学部は昨年とデータの取り方が異なる)

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