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「76世代」の時代が来た ミクシィ東証マザーズ上場

(AERA:2006年9月25日号)

 自分にとってその起業がおもしろいかどうか。そこが出発点。

 76年前後生まれ、ミクシィ世代のビシネス展開から目が離せない。

 ◇

 東証の「立ち会い開始の鐘」。株式上場を果たした経営者のみが鳴らすことができる成功の証だ。9月14日、インターネットの専用サイトで会員が交流や情報交換ができる「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」の国内最大手、ミクシィの笠原健治社長(30)が鳴らした鐘の音は、国内SNSの勝者を示すものでもあった。

 IT・インターネットの専門アナリストとして名高い大和総研シニアアナリストの長谷部潤氏は、

 「ミクシィの会員数は今年7月で500万人を超えました。来年度前半には1000万人を超すでしょう。ヤフーや楽天が後発サービスを開始したが、脅威にはならない」

 SNSは「ネットワーク外部性」が強いからだ。あるサービスへの参加者が増えれば増えるほど、一人ひとりの参加者が得られる利便性も向上し、サービス全体の価値も向上していくのが「外部性」。現在のミクシィは「外部性」により、人が人を呼ぶ構造になっている。もはや、ヤフーや楽天といえども、ミクシィに追いつける状況にはない。ウェブ2.0(インターネット活用の第2の波)の時代でも、「ウィナー・テイクス・オール」(勝者による独り占め)の原則には代わりはないのだ。

 IT系企業の経営者を世代分けすると、第1世代は孫正義ソフトバンク社長、アスキーを創業した西和彦氏、第2世代は楽天の三木谷浩史社長やライブドア前社長のホリエモンこと堀江貴文被告だ。

●無理には争わない

 そして、ウェブ2.0を担うミクシィの笠原社長らは第3世代で、1976年以降に生まれた20代後半〜30歳ぐらいの経営者が多いことから、「ナナロク世代」とも呼ばれている。

 第1〜2世代とナナロク世代では経営者の姿勢や性質に大きな違いがあるように思えてならない。

 第2世代までは「勝者独り占め」原則が起きた場合、そのシェアを奪うべく正面から戦いを挑んでいた。

 象徴的なのが、ポータルサイトを巡ってヤフーに挑んだホリエモンだ。ポータルの勝負所は品ぞろえと規模。相手にあって、自分にないサービスがあれば、致命傷となる。だから、M&Aで自社にないサービスを持つ会社を次々と買いまくった。

 ところが、ナナロク世代になると、「勝者独り占め」原則が起きても、無理には争わない。

 たとえば、同じSNSのグリー(田中良和社長)は、KDDIと組むことで、パソコンからモバイル(携帯電話)にSNSの軸足を移そうとしている。

 ブログでSNSと競合する、はてなの近藤淳也社長は「はてなにしかできないものを開発するため」(近藤社長)、ほとんどの社員を東京に残したまま、妻ともう一人の社員を連れて、渡米。活動の拠点をシリコンバレーに移してしまった。

●ルックスもそれなりに

 違いはまだある。

 「ミクシィの笠原君は学生時代から知ってます。チャットで会話したり、夕食を一緒に食べたり、悩みを話し合ったりする。はてなの近藤君も仲良いですよ」

 と、グリーの山岸広太郎副社長が言うように、経営者、幹部同士が仲が良いのもナナロク世代の特徴だ。一方で第2世代まではいがみ合いの印象が強い。ナナロク世代は自然体で、ルックスも余計な油が抜けたような感じだ。

 「大学4年のときに就職活動をしたけど、自分の一生を託せると思える会社がなかった」

 とはてなの近藤社長。好きなことを仕事にしたかった。大学院に在籍中に、自転車レースのカメラマンの仕事が舞い込んだ。制作会社などでカメラマンを2年ほど続けたが、はてなの原型のようなインターネットサービスにも興味があった。思い切って会社を設立した。

 もちろん、ナナロク世代でもいわゆる一流企業にいったん就職している人は多い。その人たちとの違いは、とグリーの山岸副社長に聞くと、

 「やりたいことのある・なし。その違いでしょう」

 と即答した。

 それでは、なぜナナロク世代がウェブ2.0のビジネスを牽引できているのだろうか。

 

●オンリーワンを目指す

 「学生時代にウィンドウズ95があり、ネット環境があり、それが当然という世代。自分がユーザーとしてインターネットにどっぷりつかっていたからこそ、こうなら便利なのに、こうしたビジネスはできないか、というアイデアがわいた。さらに言えば、第2世代がインターネットで成功していたというのも大きい」

 と『ウェブ2.0は夢か現実か?』の著書がある、ジャーナリストの佐々木俊尚さんは言う。

 一方、前出のアナリスト長谷部氏は、ナナロク世代を、

 「ナンバーワンではなく、オンリーワンを目指している世代」

 と表現する。

 第2世代までのビジネスモデルはオークション、eコマース、バナー広告などリアル経済のネット版(=代替)で、ビジネスのパイが大きかったので、大きな成功を望めた。しかし、ビジネスモデルが少ないために、同じビジネスモデルの同業他社と生き残りをかけて、ナンバーワン争いをするしかなかった。

●76の次はさらに飛躍か

 一方、ナナロク世代は第2世代が覆い尽くせなかった隙間=スペースに新たなネット特有のビジネスモデルを築くことで、ビジネスにしていった。もちろん、そのスペースでも「ウィナー・テイクス・オール」の原則は適用されるが、そのスペースを埋められたら、第2世代のように営業力や資金を使って無理にそこを奪うよりも、技術を使って別のスペースを発見、開拓しようとする。パイは小さいが、ビジネスモデルが多いので、オンリーワンになりやすく、成功の確率も高いのだ。

 「ただし、あくまでも隙間ですから、ビジネス市場としては小さく、例えばヤフーや楽天をしのぐような大きな成功は望めません。ミクシィは多くの人を呼び込むことで自らフィールドを作ったので、ナナロク世代の起業の中で例外的に大きな成功をあげた。たぶん、ナナロク世代最大の成功例でしょう」(長谷部氏)

 月額263円からのレンタルサーバー「ロリポップ!」などを運営するペーパーボーイ&コーの家入一真社長は、元引きこもり社長としても有名だ。

 自宅でもできるようにと始めたレンタルサーバー事業が投資会社GMOインターネットの熊谷正寿社長の目にとまり、出資を受け、大きく成長した。

 「将来的には、僕が上の世代の方から助けてもらったように、僕らよりもっと若い世代のアイデアを実現させてみたい。M&Aで会社を買うというより、いろいろなところに出資をして、一緒にやってみたい」(家入社長)

 それでは、ナナロク世代からアマゾンやグーグルのような世界規模の成功例は出ないのだろうか。

 ジャーナリストの佐々木さんは、

 「そうした世界規模の成功を収めるとすれば、全く新しい技術を使うナナロクの次世代の経営者。ナナロク世代が多く成功して、次世代に投資するという連鎖が続くことが重要だ」

 (AERA編集部・伊丹和弘)

■76世代が担う企業

 ●会社名 ミクシィ

 (1)代表 笠原健治 75年生

 (2)主な事業 ソーシャル・ネットワーキング・サービス

 ●グリー

 (1)田中良和 77年生

 (2)ソーシャル・ネットワーキング・サービス

 ●フォートラベル

 (1)津田全泰 76年生

 (2)旅行者の口コミサイト

 ●ペーパーボーイ&コー

 (1)家入一真 78年生

 (2)ブログ・レンタルサーバー

 

 ●ウェブシャーク

 (1)木村誠司 75年生

 (2)商品情報中央管理システム

 ●コネクティ

 (1)服部恭之 75年生

 (2)ポータルサイト構築

 ●はてな

 (1)近藤淳也 75年生

 (2)ブログ・人力検索

 ●ドリコム

 (1)内藤裕紀 78年生

 (2)ブログ・検索サービス

 ●RSS広告社

 (1)田中弦 76年生

 (2)ブログに広告配信

 ●ホライズン・デジタル・エンタープライズ

 (1)小椋一宏 75年生

 (2)サーバーマネジメント


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