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投資ファンドに集う人脈 東大卒、官僚経由ファンド行き

(AERA:2008年4月21日号)

 巨額マネーを動かす投資ファンド。でもいったい誰が動かしているのか。気がつけば霞が関や邦銀の大物たちが集っていた。動機は憂国――。(AERA編集部 太田匡彦)

 蓑田秀策氏(56)は2007年4月2日の朝を箱根の温泉で迎えた。30年以上にわたるサラリーマン生活ではありえなかった、平日の始まり方だった。

 一橋大経済学部を卒業し日本興業銀行に。シンジケートローン市場を作って協調融資拡大の先駆けになってきた。みずほコーポレート銀行の常務を最後に07年4月2日付で退任した。

 「サラリーマンとしてやるべきことは全部やった。『みずほの常務』じゃない、『私』という個人を試したくなりました」

 自分を縛るものがなくなり、組織に守られない自分の価値を探っていた。

 ●「個人として勝負」

 4月末までに、いくつかの誘いがあった。そのなかから選んだのが米系投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)だった。みずほ時代から多くの投資ファンドと付き合いがあり、KKRは質の高いファンドだと考えていた。

 「日本ではファンドのイメージが悪く、存在自体が定着していない。そういう意味で、組織でなく個人として勝負ができると考えました。グローバルな環境で働き、自分がどこまで通用するか知りたかったのもある」

 KKRは投資先企業の価値が総額40兆円を超える、世界最大級の投資ファンドだ。その日本法人社長という肩書には少し不釣り合いな、新入社員のような初々しい「志望動機」。だが、元興銀マンには強い思いがある。

 「投資ファンドの機能は、かつて日本の銀行が果たしていた、長い目で企業に投資して一緒に成長するという役割にとても近い。日本企業を強くするのに、これは使えます」

 ダイエーやカネボウ、ウィルコムなどの再建で認知が広がった投資ファンド。経営改善によって企業価値を高めたり、破綻企業を立て直して再生させたり、かつてあった「ハゲタカ」イメージも変化してきた。

 その投資ファンドに、霞が関や邦銀の大物OBが次々と集まってきている。背景にあるのは人脈と日本の現状への憂いだ。

 東京スター銀行の再建などを手がけたローンスター・ジャパン。同社会長を務め、いまは西日本シティ銀行頭取の久保田勇夫氏(65)は旧大蔵省出身。東大法学部を卒業、国際金融局次長や国土事務次官などを経てきた。

 ●成功報酬は億単位

 その後任で現会長の岩下正氏(60)もまた東大法学部から大蔵省というルートを歩んでいる。国際協力銀行理事の経歴もあり、

 「役所や国際協力銀行時代のネットワークが期待されている」(同社関係者)

 カーライル・ジャパンには、やはり東大法卒で、旧通商産業省で通商政策局長などを務めた伊佐山建志会長(65)がいる。業界の事情に通じているヘッドハンターは解説する。

 「経済官庁や邦銀のOBは多くの業界にネットワークがあり、日本での実績が少ないファンドにとっては顔役としても申し分ない。官僚OBにとっては数千万円の基本給と億単位の成功報酬も魅力的でしょう」

 伊佐山氏と同じ旧通産省出身の細川恒・元通商産業審議官(67)は、06年にKKRのシニア・アドバイザーに就任した。

 「手伝ってもらえませんか」

 06年初夏、創業者のひとりヘンリー・クラビス氏から直接、接触があったという。

 細川氏はこう話す。

 「日本の安全や豊かさにつながる仕事だと思っている。長期的に見て日本企業を育てるという仕事を、誰かがやらないと」

 ●人脈ないと狭き門

 そのKKR日本法人の2人目の社員として、設立当初から携わったのが藤井良太郎氏(33)。東大法学部を卒業し、大蔵省に入省。米スタンフォード大MBAコースに留学中、投資ファンドの魅力を知った。

 「日本経済のために何ができるかという思いが常にある。そのアプローチとして、プレーヤーとしてパワフルに動けるプライベート・エクイティが、制度を作る官僚より魅力的に思えた」

 大蔵省を辞め、ゴールドマン・サックスにいた05年9月、KKRが日本法人を立ち上げるという情報を知った。

 「話が聞きたい。誰にコンタクトをとればいいのか」

 KKRで働いていたスタンフォード大時代の同級生にそんなメールを書いた。その紹介で幹部たちに会うことができ、クラビス氏とも東京・虎ノ門のホテルで会った。藤井氏はいう。

 「自分たちが正しいことをしているかどうかを常に問うている。そんな姿勢を知り、人生をかけてもいいと思いました」

 トップの人材によって若手の顔ぶれも規定されてくるのだ。

 例えば国内大手のユニゾン・キャピタルは創業者の江原伸好氏が元ゴールドマン・サックスだから、ゴールドマン出身者が多い。アドバンテッジパートナーズは創業者の笹沼泰助、リチャード・フォルソム両氏がコンサルティング会社出身だから、こちらはコンサル出身者が圧倒的に多い。笹沼氏のハーバード大人脈も強いといわれる。

 外資系ではRHJインターナショナル(旧リップルウッド)は三菱商事出身者とハーバード留学組で占められ、カーライルは安達保日本代表が元マッキンゼーのためかマッキンゼー出身者が目立ち、東大出や官僚OBもいる−−といった具合だ。

 バックグラウンドとして必須とされるのが東大・京大・一橋・早稲田・慶応レベルの学歴、海外MBA、外資・投資銀行・コンサル・中央省庁いずれかの経験、そして英語力だという。また人脈がなければ「入り口」がわかりにくいのも事実だ。前出のヘッドハンターは言う。

 「人の動きが特殊な業界。人脈とバックグラウンドがないと入り込むのが難しい、極めて狭き門です」

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