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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>関西>関西を楽しむ>勝手に関西世界遺産> 記事 登録番号160 薬師寺と大池2008年03月27日 薬師寺は、唐招提寺とならび、奈良の西ノ京を代表する文化遺産である。その東塔と東院堂は、国宝に指定されている。もちろん、世界文化遺産のひとつでもある。近年再建された西塔と金堂も、復元の手本として評価されてきた。
おとずれる観光客も多い。とりわけ、春はにぎわう。奈良ガイドの本にも、大きくとりあげられている。わざわざ、関西遺産として、ここであつかうまでもないだろう。私も、薬師寺そのものを、あらためて顕彰しようとは思わない。 だが、薬師寺の西南西に位置する大池のことは、あまり知られていない。じじつ、この池を論じるガイドブックは、まれである。こちらまで足をはこぶ観光客も、それほど多くはないだろう。 ◇ しかし、写真家には、ここがけっこうおなじみの場所となっている。薬師寺の伽藍(がらん)全体をうつしだす、絶好のアングルを、池の南西側があたえてくれるからである。水面のむこうに、東西両塔と金堂がうかびあがる。それも、若草山のなだらかな稜線(りょうせん)を、遠景にのぞみながら。 じっさい、西ノ京を案内する写真には、大池ごしのものが少なくない。テレビの薬師寺探訪番組では、お約束事めいた映像にもなっている。夕映えの構図あたりは、ほとんど紋切り型であると言ってよい。 国宝と世界文化遺産を、わかりやすく、絵になるようにうつしだす。そのつとめを、この池はながらくはたしてきた。その裏方的な役目に敬意を表して、関西遺産の名をおくりたい。 さて、薬師寺である。この境内では、堂塔がシンメトリーを構成するように、ならべられている。南側から伽藍をうかがえば、その様子がよくわかる。南門、中門、金堂、講堂が、南北軸上に配置されている。そして、その軸線と直交する線上へ、東西両塔は軸から等距離のところへ、もうけられた。まったく、左右対称のつくりになっているのである。 7世紀末に、唐から大陸風のがっしりしたかまえが、つたわったということか。しかし、大池から見れば、このシンメトリーは、くずされる。どうやら、われわれは、大陸伝来の対称形に、それほどこだわっていないようである。 ◇ 大池じたいは、古くからある。万葉集にも、うたわれている。ここからの、シンメトリーを逸脱した光景が、いつから注目されだしたのか。その風景論的な系譜をさぐってみたいものである。 (文・井上章一<国際日本文化研究センター勤務> 写真・立花常雄)
○時の交差 いとおかし 薬師寺の南門から歩いて十数分。大池の西側に回り込むと、池沿いに住宅や学校、病院が並ぶ。行き交うのは、犬と散歩する人や、自転車に乗った子どもたち。日常の風景だが、ふと池の向こう側へ目をやると、薬師寺の両塔、そして若草山が背景に広がる。 ここは、由緒ある絶景スポットのようだ。万葉集にも詠まれた「勝間田池」が、大池とされており、清少納言もこの池の美しさをたたえたという。近年、写真家の故入江泰吉さんらの写真で、一躍有名になった。若草山の山焼きの日はもちろん、普段でも早朝からカメラを構える人たちの姿が絶えない。 奈良県耕地課によると、いまでも農業用水として利用されている、現役のため池だ。この一帯は風致地区に指定されているため、建物の新築や増築、色彩の変更などには奈良市長の許可がいる。 夕暮れ時、周囲をゆったり歩いていると、突然さあーっと風が水面を揺らした。塔は夕焼けに染まっている。まるで別世界のよう。現在の暮らしが息づく岸に立ち、対岸にいにしえを眺める。その距離感も心地いい。 ★関西が誇る「お宝」を紹介します。「これぞ関西の世界遺産」という有形無形のお宝の推薦をお待ちします。住所、氏名、電話番号を書き、〒530・8211朝日新聞生活文化グループ「勝手に関西世界遺産」係へ。ファクスは06・6231・9145、メールはdo-kansai@asahi.comで。ご意見、情報などもお寄せ下さい。 PR情報この記事の関連情報勝手に関西世界遺産
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