|
ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>関西>関西を楽しむ>勝手に関西世界遺産> 記事 登録番号166 ホワイティうめだ吸気塔2008年05月08日 大阪駅前に、5本の巨大な柱がニョキニョキと生えてきたのは、今からもう45年も前のことだった。
樹齢45年、というよりは樹齢4500万年! と口にしたくなるほど、太古の巨木林を思わせる。今にも恐竜が、のっしのっしと姿を現しそうだ。 と思えば一方で、瞬時にタイムスリップをして、未来都市に迷い込んだ気にもなる。周りの四角いビルがつぎつぎと色あせ、時代遅れになり、建て替えられても、この柱だけはいつまでも、このまま残りつづけるような気がする。 柱は、地上の空気を「ホワイティうめだ」という名の地下都市に取り込むために、まさしく「生えている」のである。いわば地下で暮らすひとびとの生命維持器官であり、それゆえに、都会の殺風景に在って、ひとり異彩を放っている。 その力強さは、直線と直線、ガラスとコンクリートで出来たビルをものともせず、各地の駅前にちょこんと設置される彫刻やモニュメントを一息で吹き飛ばしてしまう。 ◇ 私事にわたって恐縮だが、「駅前薬局の息子」に生まれた筆者は、『ハリボテの町』(朝日新聞社)という本の中で、駅前に置かれるそれら装飾物の一切を「駅前彫刻」と名付けて、日本各地の駅前を見守ってきた。その経験から、この大阪駅前の柱が最高峰と断言できる。全国の駅前から、ごまんとある裸体像や郷土の偉人像や抽象彫刻のすべてがなくなってもよいが、この柱だけはいつまでもあり続けてほしいと、大阪駅前に降り立つたびに思う。 ◇ それにしても柱としか呼びようがない点に(正式名称は「ホワイティうめだ吸気塔」だが通称も愛称ない)、設計者村野藤吾という建築家のデザイン思想が表れているようだ。 大阪を拠点に活躍した村野藤吾の仕事は、かつてこの欄でも紹介し、尼崎の旧大庄村役場を関西世界遺産第24号に登録した。庁舎(尼崎市役所)、オフィスビル、ホテル、百貨店(旧そごう大阪店)、劇場(新歌舞伎座)、美術館(旧兵庫県立近代美術館〈現・同県立美術館原田の森ギャラリー〉)、教会(カトリック宝塚教会)、大学(関西大学)、住宅という具合に、手がけた仕事の幅は広いが、どの建物も既存のイメージを少しずつはみ出し、すなわち「○○らしくなく」、既存の吸気塔・排気塔らしくない点で、世の中のどこにもこの柱の右に出るものはないと思われ、したがって何とも呼びようがないのである。 ひとことで言えば、この柱はただただしぶとい。だから、大阪の玄関にふさわしい。 (文・木下直之〈東大教授〉 写真・小笠原圭彦)
○その存在感 仕掛けなし 大阪・キタの一等地。阪神、阪急の両百貨店と曽根崎警察署に囲まれた三角地にその塔はそびえ立つ。 高さ14〜18メートルの計5本は、一部が上の方でつながっている。鉄の構造材を、上から下までステンレス板がパッチワークのように覆っており、その様子は巨大な機械のようでもある。 内部にも大がかりな仕掛けがあるのだろう、と管理する大阪地下街株式会社の担当者に尋ねた。答えは「地下街に空気を取り込むためのものだから、中はがらんどうですよ」。ちょっと拍子抜け。排気と吸気の違いはあるが、要はおしゃれな煙突なのだ。 63年の建築当初、塔の足元の三角地には噴水があり、涼やかさを演出していた。いつしか水を出さなくなり、その後噴水設備は取り壊された。95年には、大阪市が三角地に植樹をし、夜間のライトアップも始めた。毎夜、巨大な塔はうっすら輝く。 時が流れ、周囲も、足元も変化した。でも、そのどしりとした存在感はびくともしない。それって、とてもカッコイイ。拍子抜けなんて思ってごめんね、吸気塔。(松尾由紀) PR情報この記事の関連情報勝手に関西世界遺産
|
ここから広告です 広告終わり お知らせ関西の企画特集関西の特集
朝日新聞社から |