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(41)高架下のトランポリンクラブ 大阪・阿倍野

飛び出す未来の金メダル
[新聞掲載]2008年04月04日

 夕暮れ時の大阪・阿倍野の阪神高速高架下。「いち、に、さん……」と元気なかけ声と共に、1.8メートルほどの半透明の囲いから、人の体が飛び出ては消える。ある時は手足を大きく広げ、ある時はくるりと宙返り。

写真頭上は阪神高速。跳ねる姿に夕日が差し込む

 ここは高架下を利用した「アベノジュニアトランポリンクラブ」だ。17年の歴史を持ち、3歳から70代までの約100人が所属する。

 阪神高速道路会社が地元で自由に使えるように阿倍野区に貸した土地を、格安で借りている。北側は交通量の多い道路、南側は墓地という“渋い”立地。「子供たちが楽しめるのと同時に、大会で活躍する選手も育成したかったので、頻繁に使える場所を探した」と井上涼子代表。体育館などを借りると、大きなトランポリンを使用前後に移動するのが大変。ここなら、使わない時はシートをかけるだけ。幅15メートルの道路が傘代わりになって、暴風雨でない限り練習はできる。

 夏は暑いし冬は寒い。練習環境としては相当厳しく、泣き出す子もいたとか。でも、開放感は抜群。「ハトが飛んできてフンをするので困るけど、夕焼けがきれい」と、5歳からここでトランポリンを始めた小学5年の藤田琴さん(10)は話す。

 一見気楽に見えるトランポリンだが、実は競技としてはハードだ。大会では、回転やひねりなど10種類の技で競う。高く飛ぶほど多く回転できるので、五輪レベルの選手では、ジャンプは7、8メートルの高さに達し、体には体重の8倍もの負荷がかかるという。台から落ちると大けがをする危険もある。また、技の美しさも採点基準の一つ。レッスン中も、井上代表からは「前を見て!」「手を伸ばす!」と鋭い指摘が飛ぶ。

 日本にトランポリンが伝わったのは1959年。日本体操協会が創始者のジョージ・ニッセンと全米チャンピオンを招き、各地で公開演技などを開催したという。

 大阪府には78年にトランポリン協会ができた。当初は公共の体育館などで、協会の指導者が子供や市民向け教室などを開いて、すそ野を広げてきた。「飛んでいるだけでも結構運動量が多く、健康によい。身軽な子どもは宙返りなどを覚え、どんどん上達した」と岩下真樹・大阪府トランポリン協会理事長。アベノジュニア出身の広田遥選手は、アテネ五輪で7位入賞。今年の北京五輪では、現在世界ランク1位の大阪体育大学の上山容弘(やすひろ)選手のメダルが有望視されている。この上山選手、昨年までアベノジュニアにも週1回程度、指導に来ていたとか。今年5月には熊取町で、日本初のワールドカップも開かれる。

 琴さんと、同じ5年生の浅見瑞穂さん(10)、私市希(きさいち・のぞみ)さん(10)の3人に「オリンピックに出たい人」と聞くと、3本の手がさっと挙がった。

 この高架下から、未来のメダリストが飛び出しそうだ。

(文・角谷 陽子 写真・矢木 隆晴)

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