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(43)どろめ祭り 高知県香南市赤岡町

飲み干した後が肝心
[新聞掲載]2008年05月02日

 「グウーッと、グウーーーッと」

写真一気に日本酒を飲み干した女性は、高々と大杯を突き上げた

 行司役のあおり文句に励まされた男女計25人が次々に、直径約30センチの朱塗りの大杯を飲み干す。なみなみと注がれた日本酒の量は男性が1升(1.8リットル)、女性が5合(0.9リットル)。今回の優勝タイムは男性が15.2秒、女性が13.8秒。誰かが言った。「人間業とは思えない」

 4月27日。晴天に恵まれた日曜の昼下がり、太平洋を望む高知県香南市赤岡町(こうなんしあかおかまち)の砂浜で開かれた「第52回土佐赤岡どろめ祭り」。そのメーン行事が、飲みっぷりと早さを競う「大杯(たいはい)飲み干し大会」だ。他所(よそ)ではそうそうお目にかかれない光景が例年この時期に、新聞やテレビで全国発信され、「どろめ祭り=日本酒一気飲み大会」というイメージが定着した。なぜ、この現象は起こったか。

 そもそも、「どろめ」とは、高知ではイワシの稚魚のこと。泥の中から大きな目をギョロリと出す様子が、名の由来との説がある。ゆでると、ちりめんじゃこ。高知では盛んに生で食べる。にんにくの葉をすりおろした味噌(みそ)やポン酢でいただくと、日本酒によく合う。

 祭りと酒との関係は無論これだけではない。祭りの歴史を知る必要がある。

 どろめ祭りは59年、漁業の町・赤岡町(あかおかちょう)の「産業祭」として始まった。ところが3年目には、町が開催するのが金銭的に苦しくなったらしい。そこで助け舟を出したのが地元の高木酒造。当時は専務で、現在は取締役会長の高木皖水(きよみ)さん(72)は「広告宣伝のつもりで引き受けた」と振り返る。日本酒を楽しむ宴席が設けられると同時に、余興として大杯飲み干し大会が始まった。

 もともと、高知県は酒と縁深い土地柄。県内に日本酒の蔵元が19もあり、05年度の国税庁の調べでは20歳以上人口1人当たりの酒類消費量は106.68リットルで東京都に次いで全国2位だ。

 さらに、“いごっそう”“はちきん”と称される高知の男性、女性の豪快な気質と、日本酒の一気飲みはピタリ合ったに違いない。

 「最初は3人くらいしか出場しなかった」が、「アサヒグラフ」で紹介されて全国から注目を浴び始めた。今回は高知以外に愛媛、岡山、茨城、大阪、京都からも大杯飲み干しに参加。約6千人が見物し、どろめに舌鼓を打った。

 もちろん、酒の一気飲みへの警戒感が強まる今、関係者は安全への配慮を強めている。参加希望者には事前に医師の診断が義務づけられ、今回は「血圧が高い」という理由で3人にドクターストップがかかった。

 注意事項の用紙には「大会参加終了後は、所定(トイレなど)の場所で飲んだものをできるだけ、体内に残さないよう対処下さい」などと記され、同意した証拠にサインが求められた。今回優勝した高知市の会社員、大原健一さん(36)も「いかに早く飲み、いかにスムーズに吐くか、ですね」。この愛すべき壮絶な祭りが長く続くよう、参加者には“吐く技術”も求められているのだ。

(文・佐藤圭司 写真・矢木隆晴)

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