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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>関西>関西を楽しむ>魅知との遭遇> 記事 (46)ラジオゾンデ世界中で ふわり哀愁 すぅーっ。人の背丈ほどもある白いゴム気球が、青い空に向かって放たれていく。
米子測候所(鳥取県米子市)の木造瓦ぶきの建物を背に、どこか昔懐かしい色彩を帯びたのどかな光景である。 実はこの気球、米子をはじめとする国内16カ所と南極の昭和基地で、毎日休みなく、朝9時と夜9時に打ち上げられている。気象庁観測課によると、世界の約800カ所でも同じ時刻に一斉に打ち上げているという。観測データは国際機関がとりまとめ、世界で共有する。 気球がせっせと運ぶのは、ラジオゾンデ。無線機つき観測機器だ。人工衛星ではカバーしきれない高層の上空で、気圧や気温、湿度などを測定して地上に伝えている。観測するのは、台風の進路や降雪の見通しなど、天気予報には欠かせない基礎データで、気候変動のチェックにも役立つ。上空約30キロの地点まで、毎分300〜400メートルの速さで上昇していく1時間半ほどの間のデータ収集である。日本では70年前に始まり、米子では終戦後まもなく始められた。 天気予報で「○○の上空にマイナス35度の寒気が入り込み……」などと言う時の「○○」は気球の打ち上げ地点。米子測候所には、毎年秋に隣の啓成小学校の5年生が見学に来る。「すぐ近くで打ち上げられた気球が、全国の天気予報に役立っていると聞くと、子どもたちの空模様への関心が高まるようです」と前田憲二校長は話す。 気球は、ジェット旅客機が飛ぶ高度の3倍の高みにも達する。ここまで来ると気圧が低くなり、気球は打ち上げ時の4、5倍、直径8メートルにまでふくらむという。そして、破裂。発泡スチロールに覆われた観測器材だけが、地上に落下する。パラシュートで、ふわりふわり……。 300グラムほどの重さしかないので、頭に当たっても大丈夫。ただ、ほとんどは海上に落ちる。米子の場合、西風の強い冬場には新潟、福井で見つかったこともあるそうだ。 1セット2万5千円。朝と夜で、5万円。これが全国16カ所で毎日、何十年も空へと消えていく。正確な予報のためにかかるこの費用が、高いのか安いのか……。 課せられた目的を果たそうと、ひたすらに上昇し、最後は元の勢いを失って、小さくなって地上に落ちてくる。そんな直線的で、あえなく終わりを迎える仕事ぶりに、“男の哀愁”を感じなくもない。 (文・木元健二 写真・矢木隆晴) PR情報魅知との遭遇
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