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釜ケ崎発、魂のラップ 出身のSHINGO☆西成さん

2008年03月27日

 多くの日雇い労働者が集まる大阪・西成の「あいりん地区」(釜ケ崎)で育ったラップ歌手がいる。SHINGO(シンゴ)☆西成、35歳。「困ったときに助け合い なしは味気ない」「都合悪ければ見ざる言わざる聞かざる 無理にブランドで着飾る」――。支え合うことの大切さや人間関係が希薄になりつつある現代を、韻を踏んだ歌詞と曲で表現する。「歌を通じてこの街の現実に目を向けてほしい」と願いながら。

写真あいりん地区の人々をテーマにしたラップを歌うSHINGO☆西成=大阪市西成区のあいりん労働福祉センターで

 SHINGO☆西成は、あいりん地区の通称「三角公園」近くにある長屋で母親と暮らす。両親は離婚し、古本屋で働く母親の手で育てられた。兄弟はいない。

 小学校に入って間もないころ、近所の朝市で中年男性から声をかけられた。「これこうとけ(買っておけ)」。差し出されたのは、米国の黒人歌手・スティービー・ワンダーのレコードだった。立ち飲み屋からカラオケが聞こえてくる街で育った少年は、すぐに音楽のとりこになった。

 奈良県内の大学を卒業後、母親の勧めで老人福祉施設に就職。しかし、8年ほど働いたある日、通勤を急ぐあまりに目の前で転んだお年寄りを助けない自分がいた。「これじゃ、本末転倒だ」。原点にかえろうと西成に戻った。

 市立更生相談所や簡易宿泊所、支援者団体……。物があふれているはずの現代なのに、街には炊き出しのみそ汁を大切にすする労働者がいた。格差社会といわれる日本の縮図が西成にあることに気づいた。見たまま、聞いたままを歌ってみよう――。言葉は泉のようにわいた。

 「困ったときに助け合い〜」の曲の題名は「諸先輩方からのお言葉」。あいりん地区で支え合いながら生きる人々の日常会話を自分なりに解釈した。「都合悪ければ〜」は、メリットがないと分かれば知らぬ存ぜぬを決め込みがちな人が多い現代社会を皮肉った。

 「でもやれど暮らせど生活は変わらん(中略)もう誰も信じない じゃないで やりたい事をやれ!」。居酒屋で居合わせた西成の人たちとの会話からも歌詞のヒントを得て、労働者だけではなく、自分にも当てはまる内容に仕上がった。

 昨年4月には、自身初のフルアルバム「Sprout(芽)」をリリース。大阪、東京でラジオやテレビにも出演するようになった。

 新年を迎えたばかりの1月2日の夜。たき火の音がパチパチとなる三角公園に設けられた円形ステージで、労働者ら約40人を前に自作のラップを歌った。「頑張れ」「有名になれよ」。カップ酒で顔が赤らんだおっちゃんらから、大きな拍手がわいた。

 あいりんで芽吹いたラッパーがスポットライトを浴びながら歌う――。そんな夢がかなったとしても、あいりんに軸足を置き、ここで生きる人々のことを歌い続ける気持ちは変わらない。

 《あいりん(愛隣)地区》 大阪市西成区の「萩之茶屋南公園」(通称三角公園)周辺に広がる。旧地名から「釜ケ崎」とも呼ばれる。市の推計(05年)では、周辺0.62平方キロメートルに2万5千人が居住し、うち2万人は労働者。建設現場などで日雇いで働く人のための簡易宿泊所が立ち並び、路上生活者も多い。

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