東アジア文化財研修旅行で中国・洛陽市の龍門石窟寺院を見学する学生ら=05年3月(京都橘大提供)
京都橘(たちばな)大学(京都市山科区)は女子大時代の92年に「女性歴史文化研究所」をつくった。05年に共学化した後も「男女共生」を大学の理念に掲げ、とかく男性の立場で語られてきた歴史を女性の視点で探る「女性史」や女性学に力を入れながら、アジア諸国にも視野を広げた研究・教育に取り組んでいる。
98年から、学生に中国の史跡などを見学させる「東アジア文化財研修旅行」をほぼ毎年実施。05〜07年には、高松塚やキトラ古墳の調査で知られる猪熊兼勝教授(考古学)や、イスラム世界への中国陶器の交流史を研究してきた弓場紀知(ただのり)教授(陶磁東西交流史)らを擁する文学部文化財学科を中心に、シルクロードの文化交流にかかわるシンポジウムを重ねてきた。
また、女性歴史文化研究所を中心に04年度から、日本学術振興会の科学研究費補助金を受けた4カ年計画「女性生活文化交流史研究―文物の交流に着目して―」に取り組んでいる。その一環で05年には、中国西域にある4〜14世紀ごろの敦煌石窟(せっくつ)寺院の壁画に描かれた「女性供養人像」などを現地調査し、女性史の視点での研究を進めている。
担当の王衛明教授(東洋美術史)によれば「供養人」は石窟寺院の造営費や、内部の仏像・仏画の費用の寄進者で、仏画の下部や石窟入り口に、一族や夫婦で描かれることが多い。約半数は女性で階層も民族も多岐にわたる。衣服や装飾品からは、石窟寺院ができた当時の生活文化がかいま見える。
王教授は「壁画の女性像については、中国などで服飾史としての研究例はあるが、女性史の視点はほとんどない」と調査の意義を語る。
横田冬彦・文学部長は「当時の女性たちの生き様は、文献資料にはなかなか残りにくいので、こうした考古・画像資料を調査することには学問的意味がある。シルクロードの女性史の再発見は、現代社会の女性の諸問題を考える上でも重要」と位置づける。