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ここから本文エリア 児童養護施設(18) 手編みの帽子 自慢したルポ虐待 第2部 サトシ君が小4のとき、母親が施設に電話してきた。このころ、母は施設近くのパチンコ店で働いていた。「いま、編み物してんねん」。面会に来るときに、持ってきてくれるという。
電話を切った後、サトシ君は、職員や施設の子どもを捕まえては、「うちの母ちゃん、すごいよな。編み物ができんねんで」と触れ回った。 面会の日。母は桃色のマフラーを二つ編んできた。だがそれは、再婚相手との間に生まれた2人の妹の分だった。サトシ君がもらったのは、菓子やヨーヨー。パチンコの景品だった。 母の帰り際、「今度はぼくの帽子も編んで」とサトシ君はせがんだ。しかし、1カ月たっても連絡がない。サトシ君は母に電話した。「今度、林間学校でスキーに行くねん。母ちゃんの編んだ毛糸の帽子をかぶっていきたいんやけど」 次の面会のとき、母は紙袋から帽子を取り出した。「はい、これあんたに」。紺色の手編みの帽子だった。 「母ちゃんが編んだんやで」。サトシ君は、毎日かぶって登校し、学校の友だちに自慢した。施設の中でもかぶった。穴が開いても手放さなかった。 小5の運動会。サトシ君は、観客席の間を歩き回って母の姿を探した。 母がいた。「母ちゃん、来てくれたんか」「ちゃんと来たで。あんた、まだ走らんのか」「もうすぐや」 かけっこで、サトシ君はビリだった。「あんた足おそいなあ」と母が笑った。サトシ君はにこにこしていた。 だが、このころから、サトシ君は万引きを繰り返すようになる。(文中仮名) ◆体験・ご意見 お寄せください。児童虐待をめぐる体験や連載への意見をお寄せ下さい。〒530・8211 朝日新聞大阪本社虐待問題取材班へ。ファクス(06・6201・3958)、メール(o-syakai2@asahi.com)。住所、氏名、電話番号を。 |