馬頭観音の御前立

松尾(まつのお)寺は、若狭富士とも呼ばれる青葉山(693メートル)の中腹にある。東の若狭側から見れば秀麗だが、実はフタコブラクダのような双耳峰(そうじほう)で、大阪・奈良府県境の二上山にも似た姿だ。
708年、唐の僧が、経典にある霊山「馬耳山(ばじさん)」に似たこの山容にひかれて登り、大樹の下で馬頭観音を感得したのが始まりとされ、開創1300年の今年、77年ぶりに西国三十三所のご本尊ではここだけの馬頭観音が開帳される。
馬頭観音特有の忿怒(ふんぬ)相と4対の腕を持つ三目三面八臂(はっぴ)の姿は、補修中の御前立(おまえだち)とほぼ同じだそうだが、天を衝(つ)く怒髪の中にちょこんといる白馬の顔は意外にあどけなかった。
流木に変じた馬頭観音に命を救われた漁師が僧となって、その流木を彫ったという言い伝えもあり、農耕や牛馬畜産、車馬交通の守り仏として知られるが、近年は競馬関係者やファンの人気も集めている。
国宝の仏画や、毎年5月8日の仏舞の日には石段で故人に似た人とすれ違う、という伝説などでも知られるが、松尾心空住職(79)自身も“名物”。徒歩巡礼仲間で「アリの会」を結成。計約990キロの西国三十三所巡礼を計5回など、すでに7千キロを歩き、三十三所の古道地図や歩行禅に関する著作、小説や説教集も出した。
文明の利便や虚飾を捨てて死に装束で歩き、草木虫魚の息吹と自身の命を体感する巡礼は古来の擬死再生(ぎしさいせい)の道と説く。「雨降りや舗装道路はいややけど空腹こそ最良のソース、はほんまです」(佐伯善照)
【開帳期間】08年10月1日〜09年9月30日
全33寺院の本尊の公開日程などは「西国三十三所札所会」のホームページ(http://www.saikoku33.gr.jp/)で。
松尾寺(京都府舞鶴市松尾532 電話0773・62・2900) JR松尾寺駅(無人)から徒歩1時間前後、電車・バスとも本数は少ない。タクシー利用は東舞鶴駅から約20分。片道3千円前後。
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清水寺など近畿6府県と岐阜県に点在する33寺院は、西国三十三札所と親しまれてきた。巡礼の中興の祖とされる花山法皇(968〜1008)の千年忌を記念した全寺院の本尊公開を前に、記者らが札所を訪ねる。