ヘルパーの男性(左)にストローで飲み物を飲ませてもらう石田雅俊さん=和歌山市内
■頼みの介護突然削減 住む所で支援に差
和歌山市内のアパートの一室。車いすの石田雅俊さん(40)が、隣室で待機するヘルパーの男性(24)に「お願い」と声をかけ、トイレの介助を頼んだ。脳性まひで全身に機能障害がある。首から下が動かず、一人では歩くことも食事もできない。事業所から派遣されるヘルパーが命綱だ。
6歳から35歳までの通算15年間、施設で生活した。「管理」される生活に息苦しさを感じ、一人暮らしを始めたのは4年半前。自由に行きたい所に行け、好物が食べられる。そんなささやかな暮らしをいつまで続けられるのか。不安が頭をよぎる。
障害者自立支援法が施行された06年当時、市から支給された重度訪問介護は月478時間あった。ところが翌年、突然101時間減らされた。今年8月、通院などの分として19時間増えて月396時間になったが、これに生活保護でまかなえる介護時間を合わせても、ヘルパーのいない「空白」が1日8時間程度生じる。
失禁して衣服がぬれてもヘルパーが来るまで待つしかなく、水分を控えて脱水症状になったこともある。緊急時に電話する手だてもない。「命の危険を感じる」日々だ。
市は支援法施行後、厚生労働省の説明に基づいて「支給決定基準」を作り、介護の必要時間を決めている。市の重度訪問介護の基本時間は、石田さんのように最も程度の重い障害があって一人暮らしの場合、206時間。これに本人の身体状況などを考慮して15〜50%の加算がある。それでも本人の希望を大きく下回る場合は、「非定型」として本人に必要なサービス量を算定し、市の審査会の意見を聞いて決める。「非定型」の石田さんは「私には24時間介護が必要です。他人の手を借りて自分の意思を実現し、人生をつくるのも自立。障害者が地域で生きる道を閉ざさないで」と話す。
今年5月、24時間介護に必要な月744時間の支給を求め、市を相手取り和歌山地裁に提訴した。月101時間減らされた点について、「合理的な理由は見いだせない」と市の決定に疑問を投げかける。
これに対して市は「一人暮らしにも十分慣れ、特別に考慮する必要性がなくなったと判断し、夜間の基本時間を3時間減らした。生命の危険が切迫している状態ではないので、24時間の介護を要する状態とはいえない」と反論している。
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埼玉県川口市。市が定めた移動支援サービスの要綱に対して、障害者団体から「制限が多すぎて使えない」と見直しを求める声があがっている。
要綱によると、利用が認められるのは、公的機関や病院などに行く時、文化教養活動に参加する時など。サービスが使えない13項目も明記された。例えば次のような制限に批判がある。
「遊興娯楽のとき」
「入場料、入館料を支払う建物内等で活動するとき」
市障害福祉課は「『遊興娯楽』はギャンブルや風俗などを想定したもので、通常の余暇活動は認めている」と説明する。しかし「窓口で『遊び目的はダメ』と言われた」という利用者もいて、線引きはあいまいだ。
また、「入場料、入館料を支払う建物内」はダメとの制限があるので、ヘルパーが映画館に入って移動介助することは原則できない。川口市の障害者も参加する「障害者の生活と権利を守るネットワークわだち」の見形信子さんは「施設に介助者なしで放っておかれたら、見ず知らずの職員にトイレに連れて行ってくださいとは頼めない」と批判する。
一方、同じ県内でも、さいたま市の要綱はずいぶん違う。
生活に不可欠な外出に加え、レジャー、外食、スポーツ観戦なども社会参加のため認めると明記。さらに代筆や伝言、食事、トイレ介助、移動先での活動支援も付随行為として認める。
自治体によって、これほどの違いがあるのはなぜか。移動支援は、市町村が実施する「地域生活支援事業」とされ、サービス範囲などが自治体任せとされたからだ。厚生労働省は「地域の実情に応じて各自治体の判断でやっていただいている」(障害保健福祉部)と説明する。
自治体の考え方や財政事情で社会参加の範囲が左右されるのはおかしいという声は強い。
■「サービス実費半額 国は負担を」
「重度障害者の地域生活に欠かせない介護サービスの枯渇が目立ち、自治体間格差も大きくなっている」と「DPI(障害者インターナショナル)日本会議」の尾上浩二事務局長は危機感を募らせる。その要因として挙げるのが、障害者自立支援法の独自の財政ルールだ。
支援法は、重度訪問介護などのホームヘルプのサービス費用を国が2分の1、都道府県と市町村がそれぞれ4分の1負担することを義務づけた。だが、国や都道府県が負担するのは、国が決めた「国庫負担基準額」の範囲内。つまり、市町村が決定したサービス量の費用が基準額を超えると、超過分は市町村の持ち出しになる。
厚労省は、国の基準が支給量の上限にならないよう自治体に周知しているが、自治体からは「国が十分な負担をしないのでは厳しい」との本音がもれる。
尾上事務局長は「国は、実際にかかる費用の2分の1を基準額に関係なく、負担すべきだ。福祉サービスを充実させる自治体ほど赤字になるのでは、『施設から地域へ』という障害者の自立は進まない」と話す。
(この連載は森本美紀、清川卓史、向井大輔が担当しました)
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