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【大失業時代】(1)派遣切り許さない

2009年3月23日

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インフォグラフ   

 09年春。何十万人もの非正社員が職を追われ、正社員のリストラも激しさを増す。戦後最悪といわれる不況のなかで、だれもが働く場を失う不安から逃れられない時代になった。権利と暮らしを守るため、何ができるのか。まずは非正社員の置かれている現実を通して、失業にかかわる制度や利用に際しての壁を5回シリーズで紹介する。

   ◇

昨年12月、滋賀県の大手メーカー工場で「派遣切り」にあった男性(39)の話 派遣会社の現場責任者から昨年10月下旬、「もう仕事ないから、あなたは4日後に解雇」と言われた。彼女と2人で派遣会社の寮にいたんやけど、「残る有給休暇を使い切ったら出て行ってくれ」と言われた。そんなもん、何日もあらへん。工場の派遣社員の3分の2がクビを切られたらしい。とにかく一方的。1年契約の途中なのに何の事前説明もない。みな怒っていた。

 11月半ばになって、人手不足になった工場に急きょ派遣されることになったけど、ひどいいじめがあって1週間ぐらいで出勤できなくなった。「とにかく違う仕事を探してほしい」と頼み込んだ。その後、派遣会社の営業所長が部屋に来て「すぐ出ていってくれ」と言ってきた。「派遣会社を辞める」なんてこちらは一言も言ってない。これは完全な解雇や。手持ちの現金はほとんどなし。寮を追い出されたその足で消費者金融に行き、30万円借りた。住む所もないから、彼女の車で安ホテルを泊まり歩いた。補償金か退職金が10万円でも20万円でも出たら、お金を借りる必要なんてなかった。

   ◇

 男性と同じく、問答無用で職場を追われ、住居すら失う非正社員が後を絶たない。生活破壊につながる大問題なのに、安易な「非正社員切り」が横行する。身を守る知識として覚えておきたいのは、非正社員だからといって、会社が好きなようにクビにできるわけではないということだ。

 まだ契約期間が残っているのに、雇用契約を打ち切られる。これは解雇で、正社員と同じく厳しく規制されている。労働契約法により、解雇に合理的な理由がなく、社会通念上認められない場合は、「解雇権の乱用」で無効となる。同法はさらに、有期契約の期間途中の解雇は「やむを得ない事由」がなければ許されないと明記。正社員以上に厳しくクギを刺す。

 一方、契約期間が満了して契約更新をしてもらえない「雇い止め」は、解雇とは異なる。だが、雇い止めにも制限がある。非正社員の労働事件に取り組む永嶋里枝弁護士(大阪弁護士会)は「更新を繰り返し、実質は期間の定めがない雇用と変わらない場合、『解雇権乱用』の法律的な考え方を適用するなどして、雇い止めを無効とした判例がいくつもある」と説明する。

 泣き寝入りせず、労働組合に入って交渉したり、裁判で争ったりする動きも増えている。大阪府の会社で、自動車保険事務の仕事をしていた元派遣社員の女性(40)はその一人だ。

 昨年11月末。派遣会社の社長に呼び出され、「(派遣先が)12月で契約切りたいって言うてはるんや」と通告された。本来の契約は2月末まで。解雇理由を聞くと、「小さなミスがちょこちょこあるから」。生活危機に直面した女性は、ネットで検索した「アルバイト・派遣・パート関西労働組合」に相談、2度にわたって団体交渉をした。

 会社の態度は一変。社長は謝罪し、ショックで出社できなかった日も含む満了日までの賃金全額と和解金を合わせ、計約100万円を女性側に支払った。

 2月16日には、ヤンマーびわ工場(滋賀県)を前日で雇い止めとなった期間従業員らが、大阪市のヤンマー本社前で「不当解雇を撤回しろ」と抗議の声をあげた。同工場では昨年、労働者派遣法で定められた最長3年間の期間制限を超す違反が発覚。会社は派遣社員を直接雇用(期間従業員)に切り替えた。だがその5カ月後、「過去に経験がない急激な生産の落ち込み」(同社)を理由に、更新を拒絶した。期間従業員のうち2人は今月12日、正社員としての地位確認を求めて大阪地裁に提訴。徹底的に争う構えだ。

 解雇通告に抗議しても会社に相手にされない――。そんなときは1人で加入できる地域の労働組合「ユニオン」に相談するのも一案だ。労組との団体交渉なら、正当な理由がなければ会社は拒否できないからだ。(清川卓史)

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