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ここから本文エリア 「医療難民」都市部常態 受け入れ、出動の4時間後2008年03月11日 どこまで広がるのか。急患の受け入れを10回以上要請しても搬送先が決まらない事例が昨年1年間に全国で1千件以上あったことが、11日公表された救急搬送の実態調査で明らかになった。救えるはずの命が危機にさらされる深刻なケースは、首都圏や近畿圏に集中していた。救急医療の弱体化に歯止めをかける有効な手だては、まだ見つからない。 ◇ 調査結果からは、関西各地で受け入れ不能状態が日常化している実態がにじんだ。 奈良県南部では昨年2月の未明、呼吸困難に陥った男性(93)が24病院に「手術中」「満床」と受け入れられず、病院到着まで約1時間かかっていた。同県は通報から医療機関収容までの平均時間が33・0分(06年)と西日本最低。緊急な処置が必要な心肺停止患者の搬送に1時間半かかることもある。 救急医の一人は「救急に積極的だった病院も経営難から看板を下ろし、訴訟のリスクから受け入れを敬遠する医師も増えた」と懸念する。 重症以上の患者で11回以上の搬送要請が28件に上った兵庫県。うち10件を占めた尼崎市では昨年7月の早朝、就寝中にベッドから転落した80代男性が15回以上断られた。救急隊は脳神経外科に対応できる病院を探したが、専門医不足などから頭部外傷や脳疾患の患者の受け入れ先が見つかりにくい状態だ。市消防局では搬送要請を15回目までしか記録しておらず、担当者は「これほど多いのは想定外だった」。 京都府南部では昨年3月の深夜、発熱と倦怠(けん・たい)感を訴えた40代男性から相楽中部消防本部に119番があった。男性は救急隊に「通院中の病院で結核の検査を受けるよう言われている」と申告。夜間に感染症に対応できる病院は少なく、搬送先探しが難航した末、14件目に照会した大阪府高槻市の病院に運ばれた。 重症以上の患者の受け入れ要請を11回以上したケースが最も多かった東京。最多の要請は50回に上った。平日の夜、70代女性を受け入れてもらうため、救急隊から39回、消防本部からも11回、病院への照会を続けた。搬送先が見つかった時、出動から4時間以上が過ぎていた。 ◇ 病院数が多いはずの都市部で、搬送を断られる救急患者が相次ぐ背景には、増大する患者のニーズに医療を提供する側が応えられなくなっている現状がある。慢性的な医師不足や病院の経営難なども患者の受け入れ不能状態に拍車をかけており、各地で「医療難民」が続出するのを危惧(き・ぐ)する現場の声が日増しに強まっている。 救急車の受け入れが年間1万件を超える横浜市中区の市立みなと赤十字病院。伊藤敏孝・副救急部長が昨年1〜3月に搬送された患者について調べたところ、約2割が一度は別の病院に受け入れを断られていた。「地方の病院なら、ほかに搬送先がないから断らないだろう」 都会で進む核家族化で、症状の判断がつかずに救急病院に駆け込む風潮が強まり、軽症者が次々と押し寄せる。アルコール中毒やうつ病、自殺未遂などの例が少なくないのも医師には負担となる。夜間に高度な専門医療を求めて苦情を訴える患者も増え、当直医が専門外の患者を診たがらない傾向があるという。 夜間や休日の勤務を伴う救急は人件費などがかさみ、病院の不採算部門になりかねない。激務や患者とのトラブルに耐えかねた勤務医が退職して開業する例も後を絶たず、救急の看板を下ろす病院が相次ぐ。 杏林大医学部(東京都三鷹市)の島崎修次教授(救急医学)は「救急部門の診療報酬を増やし、勤務医の待遇改善につなげることが急務」と指摘。さらに、長期的課題として、「専門分野に取り組むだけでなく、救急に携われる医師の育成に向け、大学教育や臨床研修制度のあり方を見直す必要がある」と強調する。 |