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「ウォール街で最も有名な日本人」伊藤清さん死去

2008年11月14日

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写真伊藤清・京都大学名誉教授

 確率論の世界的権威で、その理論は金融工学にも応用された数学者、京都大名誉教授の伊藤清(いとう・きよし)さんが、10日午前9時26分、呼吸器不全のため京都市内の病院で死去した。93歳だった。葬儀は近親者のみで行われた。数学関係者有志により12月中にお別れ会が計画されている。

 三重県生まれ。東京帝国大理学部を卒業し、内閣統計局統計官、名古屋大助教授などを経て52年から京大教授。その後、学習院大教授などをつとめた。78年に朝日賞、恩賜賞・日本学士院賞、06年にガウス賞を受賞、今年の文化勲章を受章したばかりだった。

 専門は確率論。顕微鏡で見える水中の微粒子の動きのような不規則な運動は、微分積分という数学の枠組みでは取り扱えなかった。これを可能にする「確率微分方程式」の理論を42年に発表。「伊藤の公式」は数学、理論物理学に大きな影響を与えた。

 同様の不規則な動きは経済活動にもあることから、金融派生商品(デリバティブ)の価格決定など最新の金融工学に応用され「ウォール街で最も有名な日本人」といわれた。伊藤理論を金融工学に応用したロバート・マートンとマイロン・ショールズの両氏は97年のノーベル経済学賞を受賞した。

 06年、数学の応用で社会に大きなインパクトを与えた研究を顕彰するため国際数学連合(IMU)などが創設したガウス賞の第1回受賞者に選ばれ、業績があらためて世界的にクローズアップされた。しかしその前から体調がすぐれず、同年8月にスペインで開かれた表彰式には出席できなかった。

    ◇

 〈高橋陽一郎・京都大数理解析研究所教授の話〉 論文を印刷する紙も不足していた戦前、伊藤さんは偶然の現象を分析する数学を世界で初めてきちんとつくった。日本発の数学が欧米にも広がり、経済に応用されるまで発展したのはあまり例のないことだ。しかし、抽象的な数学が現実に応用されることには「測りきれない問題があるように思えてならない」と指摘していた。金融問題から発した経済危機を気にして「英知を集めないといけない」と言われていた。

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