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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>関西>関西の住まい>ぷらっと沿線紀行> 記事 親しき都 近くて遠し JR小浜線ぷらっと沿線紀行(52) 今春まで放映されたNHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」。ヒロインは、故郷の小浜から大阪へ向かうためJR小浜線に乗る。
そのシーンが鉄道ファンの間で話題になった。「架線があるのはおかしい」。ドラマの舞台設定は92年だが、小浜線が電化されたのは03年になってからだ。 若狭湾に沿って主に福井県西部を走る典型的なローカル線。採算が見込めないのに電化できたのは、沿線に15基ある原子力発電所のおかげだ。事業費100億円の半分以上は電力会社から県への寄付で賄った。いろんな形で地元に落ちる「原発マネー」は立派な公共施設や道路なども造ってきた。 若狭出身の水上勉は87年、短編小説集のあとがきで、古里が失われていく様を嘆いた。「辺境といわれた若狭の孤村が、企業と行政の机上プラン一つで、こんなにうつり変(かわ)るものか」 その流れに小浜市は乗らなかった。原発誘致の動きもあったが、住民の反対で立ち消えた。周辺自治体の駅が改装されていくなか、小浜駅のホームは木造のまま。中心部には古い町並みが残った。 「京は遠ても十八里」。小浜の人がよく口にする言葉だ。朝廷に海の幸を納めた御食国(みけつくに)。「鯖(さば)街道」を一昼夜歩けばたどりついた都への親しみが表れている。 だが、近代にできた鉄路は国策で大回りを余儀なくされ、京都への道のりは倍になった。 ■回り道 それも悪くない 古くから漁業や交易で栄えた小浜には、8〜9世紀に創建された古寺が多い。「海のある奈良」とも呼ばれる由縁だ。鯖(さば)街道は新鮮な魚を京都に運び、最新の文化を持ち帰った。 明治以降、若狭湾の西にある舞鶴は軍港、東の敦賀は国際港として国の戦略拠点になり、1922(大正11)年に敦賀―東舞鶴間の鉄道84.3キロが完成した。その中間に位置する小浜の住民は、鯖街道沿いに京都と直通で結ぶ路線を熱望してきたが、かなわないまま。原子力発電所を受け入れなかったことで、さらに周辺から取り残されていった。 ◇ 今、京都に向かう人の多くは路線バスで滋賀へ抜け、琵琶湖西岸を走るJR湖西線に乗り換える。小浜線で敦賀か東舞鶴を経由するより早くて、料金も安い。 小浜駅のホームに降りると、「琵琶湖若狭湾快速鉄道 早期実現」の看板が見えた。湖西線まで新線を敷き、小浜―京都を現在の半分以下の約1時間で結ぼうと17年前から運動が続く。「新線実現住民の会」代表の津田浩一郎さん(49)は小浜線への複雑な心境を語った。「乗らないと運行本数が減り、乗れば京都が遠くなる」 駅前商店街を抜けると、格子窓の古い町家が連なる地域がある。その一角の三丁町(さんちょうまち)はかつて花街としてにぎわったが、26軒あった料亭は3軒、30人いた芸妓(げいこ)は4人に減った。芸をしこんできた小浜料亭事業協同組合は今年3月末、50年の歴史に幕を下ろした。 戦後まもなく両親から料亭「たる井」の経営を引き継いだ大田麗子さん(79)は、京都から三味線と踊りの師匠を招き、芸を伝えてきた。「宴会が洋式化し、踊りや唄(うた)を見せる機会はなくなりました。時代には逆らえません」 ◇ そんな町並みが今年6月にも、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定される。「改築ができなくなったら困る」「費用がかかるのでは」という住民の誤解を解いて回ったのが、常高寺住職の沢口輝禅(きぜん)さん(68)だった。 江戸初期に創建された常高寺は小浜藩から手厚い保護を受けたが、明治以降は財政難で所有地の多くを売り、本堂や山門を焼失する不幸にも見舞われた。半世紀以上も顧みられなかったところへ、先輩の勧めで秋田出身の沢口さんがやってきたのは90年。敷地内のプレハブに住み、十数年かけて再建を果たした。 沢口さんの目に、小浜の風景は新鮮に映った。保存に反対する人たちの説得にあたるのは、しがらみのない「よそ者」に打って付けの役回りだ。「それが、寄付などで寺の再建に協力してくれた地域住民への恩返しになると思った」。一軒ずつ訪ねては、町並みが刻んだ歴史の価値を訴えた。 小浜の建物や暮らす人の言葉には、遠くなった京の香りが今も染みついている。それがいつまでも残ることを願った。 鉄っちゃんの聞きかじり〈いざとなれば第三のドア〉 小浜線を走る125系は電化に合わせてデビューした車両だ。JR西日本はローカル線の電化区間に旧国鉄時代の車両を使ってきたが、快適性向上などを目的に新たに開発。北陸線などにも導入されている。 車体には軽量ステンレスを使い、低騒音・低振動を実現。前後に運転席があって1両でも運行できる。車いす対応トイレなど最新設備も整っている。ドアは前後2カ所だけだが、乗降客が増える可能性も考慮して中央に3カ所目を増設できるようになっているのが特徴だ。 最高時速は120キロだが、変電所の容量が小さい小浜線では残念ながら85キロしか出せず、実力を発揮できていない。バリアフリー対応として通路幅を広げるため、座席数を従来の半分以下にしたことが乗客の不評を買い、登場から1年後に座席数を増やすなど、いくつかの手直しもされている。 探索コース 小浜市が薦める散策モデルコースは徒歩3時間。約3万2千人が住む市内に約130の寺があり、人口あたりでは日本最多という。いづみ町には魚介類の小売り専門店が多く、水揚げされたばかりの鮮魚や焼きたての鯖が並ぶ。「ちりとてちん」のロケ地を紹介する看板も随所に立ち、名場面を思い起こさせてくれる。 この記事の関連情報ぷらっと沿線紀行
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