
あらゆるモノが便利へ便利へと進む時代ですが、あまり便利過ぎるのは、多くのモノと同様、住居についても考えものです。便利というのは人間がラクをするということだからね。毎日毎日ラクをして、それがあたりまえになるうちに、ある種の能力をスポイルしてしまうことになりかねません。
早い話、駅から近いかどうかはいちばんわかりやすい便利さですが、運動不足気味の現代人にとって駅までの歩行はカラダを動かす貴重な機会でもあります。これが短いのは、考え方によっては望ましくない。逆に家が丘の上にあって坂や階段を朝晩歩いていると、足腰が丈夫になるというものです。
ボタンひとつでいろいろできてしまう家、何もしなくても自動的にあれこれ機能する家も、生活の手応えがなくて案外つまらない。便利だと感動するのは最初だけです。
安藤忠雄の「住吉の長屋」という名作住宅は家の中の移動に雨の日は傘をささなければならないことで有名ですが、こういう家だといつまでも刺激的で、住む人が自然に元気になってくるのではないでしょうか。(文・長尾藤三 え・橋本昭)