最近、ヒトの若者が性に積極的でなくなっていると聞く。いわゆるセックスレスである。
ヒトは子孫を残すためだけではなく、快楽や愛情確認のためにもセックスをするが、動物のそれは子孫を残すためだ。ヒトと動物では、その辺りの事情が違うから、セックスレスは人間に特有の問題と思っていたら、どうもそうではないらしい。
高層マンションで暮らすチンチラ猫のメス、ミーちゃんは、飼い主を見てはウネウネしているのだという。「これって、なんですのん。いつものミーと違う」と飼い主の女性に尋ねられた。
「発情です。どうにかして〜といってんのですわ」「そう言われても、私はミーの要求をかなえてやるわけには……」と困っておられる。
「そんなら、ミーちゃんに彼氏を見つけてあげることですなぁ」と提案したら、飼い主は、お眼鏡にかなう猫を懸命に探した。「これから、ミーはお見合いに行きます」という報告もあり、ミーちゃん2世が見られるかな、と期待していた。
ところがミーちゃんは、お見合い相手のオス猫を見た途端、発情をピタリとやめた。「あんただれ? そばによらんといて」という感じで、フーフーと激しく怒り、威嚇したそうだ。
よく考えれば仕方のないことかもしれない。ミーちゃんは、親元を離れてからマンション暮らしの毎日で、猫というものを見たことがない。自分を猫だと思っていなかったのだ。
動物界にもセックスレスがあるようだ。こうなると、ミーちゃんにとって発情相手は飼い主しか考えられないのだろうが、それは無理。こんな悲恋(?)を防ぐには、幼い時から、猫は猫、犬は犬に慣れさせることだ。
(獣医師・石井万寿美)