あまり腕のよろしくない医者は、ヤブ医者なんていわれる。ある時聞いた落語で、ヤブ以下の医者もあると知った。「風邪の時だけお呼びがかかる、風邪(風)で動くので藪(やぶ)医者というんです。でも藪医者になれば一人前。筍(たけのこ)医者というのもある。それはこれから成長して藪になろうという…」
うまいこというものである。私もせめて、タケノコは卒業してヤブ獣医師になっていたい。
さて、風邪の話題だ。寒くなると「風邪で寝込んでしまって。ずっと犬と一緒に寝てたんやけど、風邪、うつしてしまったと違うやろか?」などと尋ねられる。答えは、いわゆる風邪は犬や猫にはうつらない。犬や猫から人にうつることもない。
風邪は、人畜共通感染症ではないからだ。ただし、猫は猫同士、犬は犬同士に感染するので、多頭飼いをしている時には悲惨なことになる可能性がある。事前に混合ワクチンを打っておくといいだろう。
実際に、人とペットが同時に具合を悪くしたことがある、ヤブ獣医師は信用ならん、という方もいるかもしれない。でもそれは、寒いと人も動物もそれぞれに体調を崩したり、風邪をひいたりするというだけだ。
飼い主が、悪寒がする、背中がぞくっとすると感じたとき、愛犬、愛猫も「なんか寒いな」と感じているのかもしれない。
そんな状況でペットに留守番をさせる時には、日が暮れてから暖房がつくように、タイマーを合わせておくのも手だ。シニアだったり、虚弱体質だったりするなら、室内でも綿素材の服を着せるのもいい。
寒い時期を、飼い主もペットも栄養バランスのいいものを食べて、ほっこりゆったり暮らして欲しい。ヤブ獣医師の願いだ。(獣医師・石井万寿美)
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