8年ほど前、「KinKi Kids」の堂本剛くんに会ったことがある。「愛犬ロシナンテの災難」というドラマの打ち上げだった。私の著書がドラマの参考にされ、スタッフとカラオケに行った。
そばにいただけで、握手もしなかった。でも、しばらくは歌声が頭の中をかけめぐり、ハイな状態が続いた。剛くんのフェロモンのおかげですっかり元気になったが、動物でも同じようなことが起きる。
うちの病院に来ていた雑種犬のマルちゃんもそうだ。13歳のオスで、人間だと60〜70歳ほどのお年寄り。ずっと1頭で飼われていたが、シーズーのメスの子犬がもらわれてきて、急に生活が変わった。
今までひとりで気楽に暮らしていたのに、メスの子犬が目の前をウロチョロする。ゆっくり昼寝もできず、少しイライラしていた。
子犬はめげずに「遊ぼうよ」と言い寄った。マルちゃんも同じ屋根の下で暮らしているので「まあ悪いやつではない」と思ったのか、だんだん一緒に遊ぶようになった。
すると、どうしたことか。ほとんど寝てばかりだったマルちゃんが、若返り始めたのだ。すっかり落ちていた筋肉が再びついただけでなく、なんと口の周りの白髪が減って茶色に変わったそうだ。やがて子犬に発情期がやってきたが、一緒に散歩するようになったマルちゃんは、他のオスが寄って来ないようにガードもするようになったという。
マルちゃんは、若い異性が醸し出すフェロモンに触れ、どうも元気になったようである。そんな不思議な力を、私はひそかに「アイドル力」と呼んでいる。(獣医師・石井万寿美)
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