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犬の家出 愛求めてクンクン

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 「ラッキーはいいよな、将来の不安とかなくて。いつも機嫌いいし」

 高校受験に悩んでいる娘が、そうつぶやいた。

 確かに、我が家の愛犬ラッキーは、散歩中に過ってリードが外れても、どこにも行かず家の前で待っている。家出とか考えていないようだ。

 ところが、獣医師をしていると、「玄関をあけたら知らない犬や猫がいた」と耳にすることがある。数年前、ある女性が「ノラ犬なんです」と言って、うちの病院に雌の柴(しば)犬を連れて来た。

 女性によると、ある日、玄関をあけると、「こんにちは。私を飼ってね」とでも言うようにニコニコしていたそうだ。家に帰る様子もなく、「これも何かの縁か」と思って飼うことにしたらしい。血液検査やワクチン接種、フィラリア予防など、できるだけのことをして帰って行った。

 ところが、後日、元の飼い主がわかったという報告があった。近所の人の柴犬だったそうだ。

 犬を連れて散歩をしていると「うちの犬や」と言ってきたが、柴犬はオッポも振らず、全く喜ばなかったそうだ。かわいそうに思い、数万円のお金を払って、その人から引き取ったという。「あんなに近所やのに、散歩している姿を見たことはなかったですよ」と憤慨していた。

 犬にしてみれば「こんなところにおられへん」と思って、家出したのだろう。そして、動物的な勘を働かせ、新しい飼い主を見つけたのだと思う。「この人は私のことを大切にしてくれる。愛してくれる」と、瞬時にわかったのかもしれない。(獣医師・石井万寿美)

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プロフィール

石井万寿美(いしい・ますみ)

 61年大阪市生まれの獣医師。
 92年から大阪府守口市で動物病院「まねき猫ホスピタル」を開いている。〔詳細〕

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