獣医学系の本を手がける編集者から、こんな質問を受けた。「最近の若い獣医さんには、飼い主の話をうまく聞けない人もいるようです。問診の仕方などをまとめた本を考えているんですけど、どうしたらいいですかね」と。
私も獣医師になりたての頃、「こんなに飼い主と長く話さなくてはいけないのか」と、少なからずショックを受けたことがある。
当たり前といえば当たり前だが、動物はひとりで病院に来ない。小動物の臨床は人と話すのが好きな人でないと無理じゃないかなとさえ思う。
動物たちが「今日は頭が割れるように痛い。吐きそうやし、どうにかして」とやって来て、「そうですか。それなら鎮痛剤を出して、血液検査もしましょうか」と診察するなんてことはない。話はすべて、飼い主から聞き出さなければならない。
飼い主によって、話し方は様々だ。順序よく時間の流れに沿って要領よく話してくれる人もいれば、初めから終わりまでよくわからない人もいる。
一方の私も、飼い主との話し方が完璧(かんぺき)というわけではない。それでも、真剣に耳を傾け、そこにどんな病気が潜んでいるのか、飼い主と共同作業で推測すれば、病気が発見できたりする。
問診には、これとこれだけ聞けばいいというようなマニュアルは存在しない。飼い主と力をあわせて病魔を見つけ、一緒に闘うという姿勢が大切なのだ。問診の仕方は、飼い主によって違ってくるけど、いろいろと語った後に満足してもらえるような丁寧さを心がけたい。(獣医師・石井万寿美)
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