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ぬくもり・いたわり、子どもに

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 仕事で付き合いのあった30代の女性が育児休業に入って半年ほどになる。今も時折自宅におじゃまし、仲良くさせてもらっている。出産前、彼女は「うちには犬のハッピーがいるんですけど、赤ちゃんに何もしないでしょうか」と心配そうに聞いてきた。

 初産は、初めてのことだらけ。生命をこの世に送り出すということで、不安なことが多い。赤ちゃんとペットのことで相談を受けることはままあるが、「赤ちゃんが寝ている間は、犬はほとんど何もしませんよ。犬は売られたけんかは買うけれど自分からは売らないから」と答えている。

 私はバタバタと働いてきたので、子どもにとっていい母親ではなかったかもしれない。生後7カ月の娘を背負って自転車に乗っている最中に、過って娘をアスファルトの道路に落としてしまうなど失敗は数知れず。獣医師なので、ぐずらずにミルクさえ飲んでいれば、大丈夫だと思ってしまうこともあった。

 それでも娘は中学生となった。思春期なので色々と難しい問題もあるが、なんとか無事に育っている。もしかしたら、家で飼っている愛犬のラッキーのおかげかなぁとも思う。

 うちの家では、娘が帰ってきても誰もいない。その代わり、ラッキーが出迎えてくれるのが救いになっている。ぬくもりのあるものが動いていて、触れることができるというのは、本当にいいものだ。

 守ってやらないといけないものが家庭にいることで、小さく力のないものを、いたわることも覚えられる。ラッキーは友だちにも先生にもなり得る、大切な家族の一員だ。(獣医師・石井万寿美)

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プロフィール

石井万寿美(いしい・ますみ)

 61年大阪市生まれの獣医師。
 92年から大阪府守口市で動物病院「まねき猫ホスピタル」を開いている。〔詳細〕

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