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心臓と同じくらいの海鼠かな 石原八束

2008年01月22日

<冬>海鼠(なまこ)

写真なまこの白酢和え

 心臓と海鼠を並べるなんて、しかも「同じくらい」だなんて、卑俗なものを遠慮なく取り合わせる俳句ならではの冒険です。私は人の臓物というものを見たことがありませんので、その大きさや形状や触感などさっぱりわかりませんが、海鼠の方をよくよく知っていますので。心臓への想像が妙にリアルにふくらんできます。

 古くから、海鼠壁、海鼠瓦、海鼠餅など、ナマコナニナニの符丁として親しまれてきた海鼠。海に棲(す)む鼠(ねずみ)だという名付けからして比喩(ひゆ)に富んでいます。

 『本朝食鑑』という元禄時代に出された日本の食べ物辞典に「状、鼠に似て頭尾手足なし、ただ前後両口あり……」とあります。海に遠い山国の人がこれを読んだとして、さてどんな生物を想像したでしょう。〈尾頭のこころもとなき海鼠かな 去来〉〈山一つ海鼠の海とへだちけり 原石鼎〉にそんなことが思い出されます。

 歳時記には「海鼠」は冬の動物として、「酢海鼠」は人事生活の季語として採用されています。海鼠は塩や酢でぐっと硬くしまります。三杯酢に柚子(ゆず)をあしらい、さっぱりと。少し手を加えて白酢和(しらすあ)えに。ちょっと一杯の肴(さかな)にぴったりです。(俳人・宇多喜代子)

   ◇

<なまこの白酢和え>

 なまこは両端を切り、腸を抜き出して、砂をきれいにしごきだし、5〜6センチに切っておく。軽く塩をして板ずりをする。切りやすい硬さになったら薄切りにしておく。

 豆腐1/2丁は熱湯をくぐらせ、ふきんで包み、おもしをして水気を切る。ごま大さじ1をすり鉢で油が出て、ねっとりするまでよく摺(す)り、豆腐、酢大さじ11/2、砂糖大さじ1/2、塩少々を加え、さらによく摺る。

 なまことひもをさっと和(あ)え、クコの実少々を飾る。

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