小鰺の南蛮漬け
〈夏〉小鰺
松瀬青々の句集『妻木(つまき)・夏之部』に出ている句です。
『妻木』は青々の第1句集。文庫本の体裁で、明治37〜39(1904〜06)年に『冬之部』から季語別に4冊刊行されています。著者生存中の個人句集としてはわが国最初のものです。青々は大阪朝日新聞社の会計部に勤めながら、俳句欄の選者をしていました。
この句、行水も夏の季語ですが、句集では小鰺(こあじ)を季語としています。この小鰺は10センチほどの真鰺でしょう。当時、青々は土佐堀川に沿った大阪市東区(現中央区)大川町に住んでいましたから、昼網で獲(と)れた小鰺売りが町を流していたのでしょう。
青々が行水を使うのは、夕暮れ近いころです。奥さんが小鰺売りを引き留めようとすると、青々は「生きてるのは買いなや」と言ったそうです。
フライなら夕餉(ゆうげ)にできますし、活(い)きのよい小鰺を使った南蛮漬けなら、明日のお菜にもなったでしょう。小鰺のたたきもうまいもんやと教えてくれたのは熊野の鮑海士(あわびあま)で俳人でもある田本十鮑(じゅっぽう)さんでした。頭を落としてはらわたを抜き、ぜいごだけをとって、味噌(みそ)と土生姜(しょうが)を入れて、指先に骨が触らなくなるまで包丁で叩(たた)いたものでした。(俳人・茨木和生)
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〈小鰺の南蛮漬け〉
小鰺はエラブタの下に手を入れ、エラと内臓を取り出す。水洗いしてゼイゴを取り、塩こしょうをし、水気をふき取る。小麦粉か片栗粉をはたき、160度の油で揚げ、一度取り出す。油を180度に熱して、二度揚げにする。だし1カップ、酢大さじ6、砂糖大さじ2、しょうゆ大さじ3を合わせ、漬け酢を作る。鰺をさらし、タマネギ、赤唐辛子の輪切りと共に漬ける。器に盛り、ニンジンやパプリカなどの野菜と青ネギを天盛りにする。(料理監修・水野保子)