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季語をいただく

人間にうわの空ありとろろ汁 清水哲男

2008年8月26日

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写真麦とろ

〈秋〉とろろ汁

 「うわの空」とは、こころここに在らずの顔つきで、見てもいなければ聞いてもいない、そんな状態のことです。そういえばそんな時ってあるあると思いあたります。

 ところがたとえ「うわの空」であっても、難なくのどをスルスルと滑ってゆくのが「とろろ汁」です。

 トロロイモとは、山地に自生する自然薯(じねんじょ)や、畑で作る長薯(ながいも)、仏掌薯(ぶっしょういも)などのことです。これをおろし金でおろし、さらに丁寧にすり鉢でよく擂(す)って、味付けをした出汁(だし)で伸ばしたものが「とろろ汁」です。

 この「とろろ汁」をご飯にかければ「とろろ飯」、麦飯にかければ「麦とろ」。いずれも秋の季語です。

 名物となっているのは、歌川広重の版画「東海道五十三次 鞠子」で知られる駿河国の宿駅丸子(鞠子)のとろろ汁です。旅姿の男二人が笠を脱いで横におき、鉢をかかえてうまそうに啜(すす)っているところが描かれています。

 お茶漬けのように手っ取り早く食べられて、美味(おい)しくて、米にほかのものをまぜてたき、飯の量をふやす糅飯(かてめし)としての効果もあり、こんな食べ方を思いついた昔のひとの知恵に感心させられます。(俳人・宇多喜代子)

    ◇

〈麦とろ〉

 白米3合はといで、ふつうの水加減にし、押し麦50グラムと水0.5カップを加え、30分ほど浸してから炊飯する。カツオと昆布で1.5カップのだしを取り、塩、薄口しょうゆ各小さじ1で味をつけ冷ましておく。山芋300グラムは皮をむき、酢水に漬けた後、水分をふき取り、すり鉢の中へすり下ろす。すりこ木ですって粘りを出し、卵白一つを加えてする。だしを少しずつ加えてのばし、熱々の麦飯に添えて出す。うずら卵と青のりを飾る。(料理監修・水野保子)

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