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ぷらっと沿線紀行

おいでよ カメの舞台へ JR牟岐線 日和佐駅

2010年1月30日

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写真JR牟岐線の日和佐駅。下り列車を降りた乗客がホームの反対側に渡っていく写真今年8月に還暦を迎えるアカウミガメのオス(右)は2月まで愛称を募集中。スタッフは週に一度、甲羅洗いや健康診断をしている写真ウミガメの産卵地の大浜海岸写真JR牟岐線・日和佐駅と一体化した「道の駅 日和佐」写真「キハ185系」気動車=いずれも徳島県美波町地図   フォトギャラリー

 太平洋に面した徳島県南東部の美波(みなみ)町。リアス式海岸の所々に広がる砂浜には、夏にアカウミガメが産卵のため上陸する。

 2005年4月、町内にある国道55号そばのJR牟岐(むぎ)線・日和佐(ひわさ)駅に、鉄道と一体型の「道の駅 日和佐」が開業した。四国では初の試みだった。

 元は、周囲を田んぼに囲まれた無人駅。利用客の減少に悩むJR四国と国土交通省四国地方整備局のライバル同士が、共存をめざし実施に踏み切った。建設費は15億円。このうち6億円を旧日和佐町(06年に由岐(ゆき)町と合併し美波町に)が負担した。

 道の駅の「産直館」には、地元の新鮮な農産物や海産物などがずらりと並ぶ。人気はウツボの干物やユズ酢を使ったすし、ウミガメをかたどったもなかなど。減少傾向だった観光客が持ち直し、産直館の年間売上額は1億5千万円に達するという。観光客らの足を癒やす足湯も人気だ。

 昨年9月からは、美波町が舞台のNHK連続テレビ小説「ウェルかめ」の放送も始まった。

 道の駅の駅長、森本長生(たけお)さん(50)は神戸の百貨店勤務を経て出身の徳島にUターンした。「販売と営業の経験を生かしたい」と、駅長の公募を知り、申し込んだ。日和佐地区は、陽光と豊かな自然に満ちた南国のまち。「優しい気持ちでお遍路さんも、カメも迎えますよ」

■ホッと一息 果てなき旅へ

 連続テレビ小説「ウェルかめ」で日和佐駅は、主人公の浜本波美(倉科カナさん)が転機を迎える際の重要な舞台となった。見習いとして働いていた出版社の雑誌が廃刊となり、東京から故郷に戻るシーン。夢を捨てきれず、徳島市内の出版社に仕事を見つけ、故郷を出発するシーンだ。

 昨年5月、撮影用の臨時列車を走らせてロケがあった。住民もエキストラとして参加。日和佐商工会の「ウェルかめ推進員」を務める主婦野村千恵子さん(45)は、列車の乗客として出演した。

 商工会は昨年12月、駅構内に観光案内所を設置。野村さんは連日、観光客にロケ地の紹介をしている。希望者に無料ガイドをあっせんし、大正から昭和にかけて漁港としてにぎわった街を案内してくれる。「ドラマをきっかけに、日和佐の生活や文化を知ってもらいたい」と笑顔で話す。

 駅から徒歩約20分で、アカウミガメの産卵地で知られる大浜海岸に出る。日本の海岸で生まれたアカウミガメは太平洋を渡ってメキシコ沖まで回遊し、また戻ってくるといわれる。大浜海岸には毎年5〜8月に上陸し、多い年で100匹以上にのぼる。

   ◇

 海岸には、ドラマの舞台となった「日和佐うみがめ博物館カレッタ」がある。ここには8月で60歳となり、飼育としては世界最長老のオスのウミガメがいる。

 1950(昭和25)年に、日和佐中学校でウミガメの研究が始まった。他の生物の餌となるウミガメの卵を守ろうと、海岸から中学校に運び、教師と生徒らが孵化(ふか)に取り組んだ。手探りのなか1匹が生まれ、中学校のプールで飼育が始まった。カメは甲羅の長さが約1メートルに育ち、博物館の前身の日和佐町水族館に移された。

 「還暦」を迎え衰えが目立ってきたものの、今も他の若いカメとともに屋外の飼育プールで泳ぎ回っている。名前がなかったため、今年の2月まで全国から愛称を募っている。豊崎浩司館長(48)は「これからも長生きしてもらい、地元にさらに福をもたらしてほしい」と言う。

   ◇

 駅の北側の山中に、赤と白に塗り分けられた鮮やかな仏塔が立つ。四国八十八カ所23番札所の薬王寺だ。徳島県内最後の札所で、次の24番札所がある高知県室戸市まで70キロ以上ある。そのため薬王寺でいったん霊場巡りを終えるお遍路さんも多い。

 道の駅で休んでいた遍路姿の北海道大大学院生永田明久さん(23)は、飛行機とバスで徳島入り。1番札所から6日間かけて1人で歩いてきた。「学生の間に遍路に挑戦したかった。ここまで苦しかったけど、日和佐まで来てほっとします」

 今川泰伸住職(50)が話してくれた。「昔からお遍路さんは日和佐で体力と気力を取り戻して、また厳しい旅に出るんです」

(文・田中 昭宏 写真・山本 裕之)

鉄ちゃんの聞きかじり〈主役車両 今春に世代交代〉

 JR牟岐線では、国鉄時代に四国向けに製造された「キハ185系」気動車が運行している。ステンレス車両や2両編成用の仕様が特徴で、分割民営化の前後には四国の各地で特急として活躍した。現在も四国では、徳島県を中心とした路線で走っている。

 3月のダイヤ改定では、牟岐線などでも新型の1500型が多く導入される。これまでは牟岐線が走る美波町、牟岐町内の6駅などはホームが低く、新型車両の乗降口と40センチ以上の高低差があるため運行することができなかった。2008年からこれらの駅でホームのかさ上げ工事が始まり、今年3月までに完成する見通しだ。

 新型は排ガス中の窒素酸化物を大幅に削減し、車両内では車いすの人が使いやすいトイレを設けている。JR四国は「エコとバリアフリーに配慮した車両」という。

探索コース

 ウミガメの産卵地・大浜海岸は「日本の渚(なぎさ)100選」にも選ばれている。冬の冷え込んだ早朝には、海面から湯気がわき立つような「けあらし」という現象が起こり、幻想的な雰囲気を醸し出す。大浜海岸にある「日和佐うみがめ博物館カレッタ」(0884・77・1110)の入館料は18歳以上600円、中高生500円、小学生300円。

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